2024年12月9日(月)

コラムの時代の愛−辺境の声−

2019年7月27日

 もう一つ興味深いのは、主人公の好敵手ながら、友情が深まっていく北朝鮮の所長や最高指導者、金正日ら、北側の人間が度量の深い人物として描かれているところだ。

 半島情勢に疎い私などの場合、北朝鮮に稚拙な先入観をつい抱いてしまうが、この映画の北は決して黒いベールに包まれておらず、普通に冗談をかわせる人間がそこにいる。拷問や粛清も、さほど苛烈には描かれていない。

生真面目を妙に尊ぶ日本とは一風変わった文化

 現在も収まる様子を見せない南北情勢をテーマに、こうした作品が出てくるところに、半島のユーモア性を感じる。生真面目を妙に尊ぶ日本とは一風変わった文化がそこにあるのではないかと。

 監督は韓国軍を舞台に若い男たちの関係性を描いた「許されざるもの」(05年)でデビューしたユン・ジョンビン氏で、現在39歳だ。映画の物語が始まる1992年は監督が13歳になる年。90年代の空気感を現実に近い形で描こうとする熱意に、監督自身の「思春期の時代」への思い入れが表れているように思えた。

 少し前の話だが、妙に懐かしい感じのする作品だった。

  
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