2024年11月22日(金)

患者もつくる 医療の未来

2012年2月6日

 この産科医療補償制度については、原因分析の内容が家族に伝えられることによって訴訟や紛争が誘発されるから望ましくないとの批判がある。しかし、これも実態を全く理解していない意見である。これまでの被害者たちは、医療事故が放置され漫然と繰り返されている状況で、原因分析と再発防止を求めるためには、裁判所に提訴するしか手段がなかったのだ。被害者たちは取り返しのつかない事故にせめてもの意義を見出そうと再発防止を願うのである。

 しかしこれからは、この補償制度が裁判の代わりとなる。産科医をはじめとする専門家たちによって、真に科学的に原因分析がなされ、健全に再発防止に向けた議論が行われれば、産科医療への信頼は高まり、医療裁判はなくなっていくはずだ。もし、この制度が始まった後でも裁判が起こるとしたら、それは、原因分析や再発防止が健全になされていない、と被害者が感じたからである可能性が高いだろう。

 まずは、この制度を続けていくことで、子宮収縮薬使用時のガイドライン違反を減らしていかなければならない。

 産科医療における問題は子宮収縮薬の過剰投与だけではない。第1回の報告書では、ほかに、胎児の異常を察知するための監視の不十分さ、心肺蘇生法の未熟さなども複数の事例で起こっていることから、これらを大きなテーマとして取り上げ、再発防止のための提言を行っている。

 現在、第2回の報告書に向けては、さらに、吸引分娩の不適切さ(ガイドラインでは通常20分以内で5回としているのに、57分間で23回続けたケースもあった)、診療録等の記載不足、緊急帝王切開までにかかる時間の問題などがテーマとして取り上げられている。それぞれのテーマで再発防止に向けた議論が健全に行われている。医療現場での真摯な取り組みを期待したい。

妊婦とその家族が知っておくべきこと

 なぜガイドラインは守られないのだろうか。注意喚起の冊子が何度配布されても一切読まない医師がいるからかもしれない。

 だとすれば、防げるはずの事故をなくすためには、患者自身が子宮収縮薬についての知識を得ることが大切である。これまでは、妊婦たちには子宮収縮薬に関する情報はほとんど与えられていなかった。


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