2024年12月4日(水)

家電口論

2019年8月2日

最強かつ優雅なビジネスツール

ソニーのVAIO「C1」、当時これほど斬新なモデルはなかった。遊び心にとんだパソコン

 ソニーからの技術遺産は、「軽・薄・短・小」を自在にした実装技術です。自在なクリエイティブを実現するためには、高性能チップ(頭脳)、フルキーボード(高速入力)、なるべく大画面(データー対比)、大容量バッテリー(長時間活動)は必須。しかも熱暴走を防ぐためチップ、バッテリーの熱を上手く逃がしてやる必要があります。まずこれが大変です。

 次に大変なのは、どこでも最高のパフォーマンスを発揮できるようにすることです。

 例えば、キーボードはややチルトアップした方が、打ちやすい。VAIOはヒンジを工夫し、フタを開けると、キーボード面がややチルトアップする構造にしています。また、割りとあるのが、取引先とのミーティングルームの設備がちょっと古いこと。プレゼンしようとしたら、VGA端子しか持っていないプロジェクターなんてもことも。

 このような時代に逆行するような不合理な状況にも真摯に対応。VAIOは、LAN端子、USB端子、USB Tyoe-C端子、HDMI端子、VGA端子、ヘッドセット対応ヘッドホン端子、SDカードスロット、セキュリティスロットを持っていますので、先ず困りません。

 また、SIMフリーLTEも備えているモデルが多いので、通信環境もバッチリです。

 これらを、薄いパソコン内にパッケージングするのは、並みの技術ではできません。VAIOならでは技術です。

使い手のやる気を出させる仕上げ

 同時にVAIOは、デザインを徹底的に強化しました。その感じは、日本刀に似ます。日本刀は、斬れるという「実用性能」に加え、反りと刃紋の「美しさ」が同居します。サラリーマンをビジネス戦士とするなら、パソコンは武器に当たります。実用性能もさることながら、見た瞬間にやる気にさせる仕掛けがあると鬼に金棒です。「高級文具」に似た、使い心地と見栄えの両立です。

 VAIOが力を入れたのが塗装技術。iPhoneの外観を五月蠅いほど追求したジョブスでも、やらなかったレベルの仕上げです。この遠目でも、見た瞬間にそれだと分かる、強い商品が生まれたわけです。

 実は、この仕上げ、ブランド維持に一役買っています。日本の家電メーカーで、メジャーグローバルブランドなのは、唯一ソニーだけでしょう。特に、2000年までは、唯一無二の製品を世に問い続けて来ました。トランジスターラジオ、トリニトロン・テレビ、ウォークマン、ベータマックスビデオ、CD、8mmビデオデッキ、等々、枚挙に暇がないほどです。

 そして、CMの最後には、「It's a SONY(そいつはソニーだ)」。「技術の」ソニー、「R&Dの」ソニーなんて、しょぼいことは言いません。「ソニーだ」と言い放つことにより、聞いた人の数だけ、スゴいソニーがイメージされるわけです。

 こうして世界中の人は、ソニーブランドに、いろいろなイメージを持つことになります。

 独立したVAIOも、そのイメージで見られます。それが、普通の外観だったらどうでしょうか? 昔可愛かった初恋の女性が、実はさほどでもなかったということになりませんか?

 このように、ある程度目立つことはブランドイメージを維持するためにも、必要なモノです。また、業務用途ですから、広告類とはほとんど無縁です。しかし、イイ意味で目立つ外観は、CM同等の効果を持ちます。

 これが「イイモノは売れる。」と言われる由縁です。よく「売れないんです。モノは良いのですが」と言う人がいますが、それは商品が自分の性能を物語れないデザインになっているからです。

 モノ余りの現代。売れる商品は、物語れるデザインをまとっています。


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