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2019年8月16日

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朴承珉 (パク・スンミン)

在韓ジャーナリスト

在ソウルジャーナリスト。時事通信ソウル支局記者を経て、「文藝春秋」「週刊文春」のソウル特派員。長年、北朝鮮問題をウオッチ。平壌や開城工業団地、板門店、金剛山など7回以上北朝鮮入りして取材。日韓メディアに寄稿している。

南北間の経済協力で平和経済が実現すれば
日本に一気に追いつくことができる

 また、文大統領は首席秘書官・補佐官会議で「日本経済が韓国経済より優位にあるのは経済規模と内需市場であり、南北間の経済協力で平和経済が実現すれば、日本に一気に追いつくことができる」と述べた。

 ところが、北朝鮮は翌日、韓国に「(我々に)殴られるような振る舞いをするな」といい、ミサイルを発射した。北朝鮮は連日のように、文政権を"おびえた犬"などと、乱暴な言葉で批判している。こうした状況で、実現の可能性があるのか、または、数十年かかるのかもしれない北朝鮮との経済協力で日本を超えるという文大統領の発言に、国家の指導者があまりにも理想的で観念的ではないかとの懸念の声も出ている。

 与党・民主党のシンクタンクである民主研究院は先月30日、「日本の輸出規制措置による韓日の葛藤が、来年の国会議員総選挙(4月)で与党に有利に働くだろう」という趣旨の報告書を民主党議員たちに送った。「(日本への)原則的対応を好む世論からみて、総選挙への影響は肯定的だろう」と報告した。これに対し「(与党が)外交的解決策よりも反日争いが得票に役立つと判断している」(朝鮮日報の社説)。

 また、与党の一部では、「来年の東京オリンピック・ボイコット」と、「韓日秘密軍事情報保護協定(GSOMIA)」を破棄しようという主張も出ている。このような文政権の対日スタンスについて野党は、「実質的な対策作りはせず、ただの『反日扇動』だけに没頭する青瓦台と与党は外交的解決策作りに乗り出すべきだ」と批判した。

 一方、日本外務省当局者は9日、韓国特派員らに徴用工問題について「韓国側が本質に近づいていくもっとクリエイティブな解決策を提供してほしい」と注文したという。さらに、「私たち(日本)の措置は報復ではないと言うが、その根底には徴用工問題があり、慰安婦合意破棄など、昨年発生した様々な事件がみな積もっていると思う」と話したようだ。日本の対韓輸出規制措置が徴用工問題と関連した対抗措置であることを事実上認めた発言である。

 いまの両国の首脳同士の強対強の形の対抗は、国益のためのものだと強弁するだろうが、それだけがすべてではないだろう。両首脳が互いに政治的目的のために利用している面はないだろうか。このような争いの直接的で最も大きな被害者は、結局、両国の企業と国民だ。泥沼状態の韓日関係を修復する道筋は見えていない。

  
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