2024年12月22日(日)

WEDGE REPORT

2019年8月16日

被害者は企業や国民

 先月1日、韓国に対する日本の半導体材料の輸出規制の発表に続く、今月2日、日本政府が、輸出管理上の優遇対象国であるホワイト国(グループA)から韓国を除外する閣議決定をした。これに、韓国政府の反発と韓国国民の日本製品不買運動が予想以上に拡大されている。韓国政府もつい12日に、日本をホワイト国から除外した。

 いま韓国で起きている対日対抗の様子や不買運動などの現状についてみてみよう。

ソウルのユニクロ

 現在、両国間に起きている事態の発端は、韓国の徴用工と遺族4人が新日鐵住金(現・日本製鉄)を相手取った裁判で、昨年10月、韓国の大法院(最高裁)が、新日鐵住金に賠償金1億ウォン(約1000万円弱)ずつ支払うよう判決が下した。その後、大法院の判決が下された日本の企業は三菱重工業、不二越の裁判まで合わせて3社である。

 安倍晋三政権が文在寅(ムン・ジェイン)政権にこの徴用工判決の解決を求めたが、文在寅大統領は、3権分立の民主主義国家で、大法院の判決は尊重されなければならないとし、対応していなかった。さらに15年12月の韓日慰安婦合意によって設立された「和解・癒し財団」を韓国政府が昨年11月に解散させた。これに対して安倍政権が対韓国輸出規制で対抗し、いまの1カ月間半に及ぶ両国の間で泥沼化している現状といえるだろう。

 韓国国民に不買運動が急に火がつくことになったのは、安倍政権の輸出規制措置の上、以下のことが大きな影響を及ぼしたようだ。ユニクロの最高財務責任者(CFO)が「(日本製品の不買運動の)影響があったとしても長期に継続するとは考えていない」「業績を引っ張るほどには至らないと想定している」という趣旨の発言があった。さらに、日本の政治家や右翼の似たような発言らが、火に油を注ぐ格好となったのは間違いないだろう。

 まず、不買運動で最も影響を受けているのはユニクロ、そして日本のビール、日本への韓国人観光客の減少だろう。

 現地の報道によると、ユニクロの場合6月に比べて7月の売上が40%、日本のビールは65%減少した。

 旅行会社・ハナツアーは、「日本に行く韓国人観光客は7月は前年同期比、36%減少しました。九州は42%減少しました。8月は、出発基準で75%減少です」(広報チーム関係者)。現地では、旅行業界の話として、50%~70%減少したと報じている。8、9月にはさらに下がるものと予想している。

 新車比較見積り購買プラットホーム・「ゲッチャ(Get車)」の企業付設研究所によると、人気があったトヨタのレクサスは購買申請基準で7月に60%減少した。ホンダ車は66%減少。また、映画館では日本のアニメの封切が無期延期になったりした。

 不買運動は、日本の自治団体にも影響が及ばされているいるようだ。6日、航空業界によると、日本の地方自治団体らが韓国の低費用航空会社(LCC)を訪ね、日韓航空路線の維持を要請したという。香川県高松市と鳥取県米子市、富山県の幹部たちが先月、それぞれ「エアソウル」の本社を訪れた。LCCの「済州航空」にも日本の自治体の幹部らが訪問している。先月末の集計基準でエアーソウルの8月、日本路線の予約率は45%、9月の予約率は25%に止まっているようだ。

 最近は、不買運動が育児用品や趣味生活用品にまで広まっている。7月中旬に不買運動のサイト"ノーノ―ジャパン"で60個だった不買運動品目リストが、ホワイト国から除外された8月2日には130品目に増加。この運動の勢いは8月に入ってもっと酷くなった。関税庁の統計によると、日本のビールの輸入は8月1日から10日までを基準に、昨年同期比98.8%も減少した。日本の酒である"清酒"の輸入も8月上旬基準で、昨年同期比70%近く減少し、日本製品を好むゴルフクラブも60%減少した。

 最近、安倍政権を糾弾する集会では、手にしたピケットなどスローガンが、"NOジャパン"から"NOアベ"に変わった。普通の日本人と安倍政権を区別して対応するという訳だ。


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