WEDGE REPORT

2019年8月27日

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 温室効果ガスを減らすため排出量取引と炭素税が導入されたが、排出量取引は肝心のキャップ(排出量の限度)がかからず低迷。炭素税もあまり広がらなかった。「排出大国」の中国、米国、インドが本腰を入れない限り、温暖化対策は遅々として進まない。

 そこで新たな切り札とみられているのがTCFDだ。本来の目的は「気候変動による金融リスクへの対応」だが、資本の流れの「川上」を押さえることで「川下」の企業に温暖化対策を意識付け、対応を迫る狙いがある。

 「トランプ大統領がパリ協定から離脱しても、積極的に気候変動のリスクと機会を考慮に入れ始めた市場の流れは止められない」と、弁護士と環境専門家でつくる環境保護NGOクライアントアースのワイズマン氏は指摘する。

 TCFDは(1)サイクロンや洪水など異常気象の増加と被害拡大による「物理的リスク」、(2)低炭素経済に変わっていく際に生じる「移行リスク」、(3)それに伴うビジネスチャンスの「機会」を算定し、財務情報として開示することを提言した。

日本企業がTCFDに「賛同」する理由

 賛同する企業・機関は7月31日現在810社。国別の内訳は日本182社、英国115社、米国109社、オーストラリア54社、フランス36社、オランダ27社、スウェーデン19社。欧州経済の心臓ドイツは18社と少ない。

 TCFD関係者やロンドンの金融筋は「日本企業はどうせ研究しなければならないなら賛同しておこうという立場。欧州に比べ日本の環境規制の動きは緩く、本気度では英国やフランスに比べ大きな開きがある。ドイツからの賛同が少ないのは脱原発でエネルギーミックスが進まず、環境車への対応も遅れているからだ」と解説する。

 セクター別では年金基金、資産運用会社、保険会社、銀行など金融セクターが最多の386社、機械、電子機器、航空会社など産業セクターが105社、原材料会社51社、電気・水道・ガス会社43社と続く。

 フランスとスウェーデン両政府はTCFDの提言の義務化に取り組み、英国政府も22年までに全上場企業や資産運用会社大手にTCFDに沿って財務情報を開示させると言及。EUの行政執行機関、欧州委員会も6月、TCFDに沿ったガイダンスを発表した。

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