英ケンブリッジ大学持続可能性リーダーシップ研究所のシーガ持続可能金融研究部長は「このプロセスは日本だけでなく、誰にとっても容易ではない。だからこそネットワークを広げることが大切」と語る。30年の歴史を誇る同研究所は間違いなくその手掛かりになる。そして人工知能(AI)などテクノロジーの急速な進歩でわれわれは便利なツールを手に入れつつある。
米サンフランシスコ・ベイエリアのスタートアップ「427」は7月下旬、格付け会社ムーディーズに買収された。女性創業者マッツァクラーティ氏は12年10月、ハリケーン・サンディに直撃された金融都市ニューヨークや巨大投資銀行が無力化するのを目の当たりにし、社会的起業を決意した。
科学者が持つ気象データを市場に結びつけ、企業や政策決定者に行動を促すのが狙いだった。427のセールスポイントは気候変動の経済的リスクを算定して値段をつけることだ。市場はすでに気候変動リスクを社債や国債の格付けに取り込み始めている。427のフレイタス氏は日本を訪れ、日本が抱える物理的リスクを投資家に説いた。同氏は「反応は上々だよ」と語る。
スウェーデンのグレタ・トゥーンベリさん(16)が温暖化対策の強化を訴えた学校ストは世界中に広がった。また、ロンドンでは2025年までに温室効果ガスの排出量をゼロに抑える社会運動「絶滅への反逆」の座り込みで逮捕者が1000人を上回った。BPへの抗議活動もエスカレートする。こうした世論を追い風に、欧州委の技術専門委員会が「石炭や天然ガスを使った火力発電は持続可能金融の基準を満たさない。原子力発電も持続可能ではない」という案をまとめたが、EU首脳会議では、石炭に頼るポーランドやチェコの強い反発が予想される。
温暖化対策に魔法の杖(つえ)は存在しない。110兆ドルの資産を動かす銀行や年金基金、保険会社などが賛同するTCFDもまだ緒についたばかり。手探りの航海が続く。
■「看取り」クライシス 多死社会が待ち受ける現実
PART 1 「終末期」の理想と現実 ギャップは埋められるか
PART 2 医師不足で揺らぐ「終の棲家」 地域医療の切り札「総合医」は育つか
PART 3 今後急増する高齢者の孤独死 防ぐための手だてはあるのか
PART 4 高齢者を看取る外国人たち 人材難の介護業界に必要な整備とは
PART 5 山折哲雄氏インタビュー「死はいつからタブーになったのか?」 90歳を過ぎたら”死の規制緩和”を
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