中国の次期最高指導者のポストに就くことが確実視される習近平国家副主席(58歳、共産党政治局常務委員、党内序列6位)が2月13~17日の5日間、米国を公式訪問した。2008年、国家副主席に就任して以来初めての訪米。米国と並ぶ大国、中国の次期リーダーとして、その「貫禄」と「親しみやすさ」をアピールする〝お披露目〟が狙いだった。
習氏は巨額の米国産品買い付けを手土産として、米市民との触れ合いを演出。米政府も破格の厚遇で迎え、習氏のメンツを立てた。米中間には、貿易不均衡や人権、台湾、アジアでの軍事プレゼンスの争いなど長期的かつ構造的な対立点があるが、今回は各問題について、双方が基本的なスタンスを確認するにとどめ、あえて論争は避けた。
「習氏に、ぶしつけなあいさつ」と報じた米紙
習氏は今秋の第18回中国共産党大会で、胡錦濤国家主席の跡を継いで、党トップの総書記に就任し、来年春の全国人民代表大会(全人代=国会)で国家主席に選出される見通しだ。
これまで通りであれば、習氏は今後10年間トップの座にすわることになる。共産党機関紙、人民日報は訪米した習氏の動向を連日、第1面で伝えた。これは習氏が超大国米国と対等に渡り合える指導者だと読者に印象づけるためだ。
一方、米紙ニューヨーク・タイムズは習氏とオバマ大統領、バイデン副大統領の会談について「習氏に、ぶしつけなあいさつ」との大きな見出しで報じた。双方は米中関係の重要性で一致したが、米側が対中貿易赤字、中国の人権状況の悪化、国連安全保障理事会の対シリア非難決議に中ロが拒否権を行使したことなどについて、率直に不満をぶつけたからだ。
米中ともに国内向けに宣伝
今年11月の大統領選で再選を目指すオバマ氏(民主党)は、対中強硬論を唱える共和党候補から「弱腰」との攻撃を受けないよう、習氏に強く出ておく必要があった。
習氏は会談では「全面対決」を避け、最小限の反論にとどめたもようが、米国訪問中に行った3回の講演の中で、詳しく中国の主張を展開した。
貿易不均衡については「米中の経済貿易協力において、米国だけが損をしているという考え方は事実ではない」と反論し、貿易は米中相互の利益を生み出していると主張した。人権については「国情や歴史文化が異なるのだから、米中間に意見対立があるのは当然だ」とし、米国との人権対話を続けながら中国の国情に基づき人権状況を改善する方針を示した。台湾やチベットは「中国の一部」との主張も重ねて行った。