2024年12月23日(月)

Wedge REPORT

2019年9月23日

 大いに盛り上がったのではないかと思う。大相撲秋場所は関脇御嶽海が昨年の名古屋場所以来となる7場所ぶり2度目の優勝を成し遂げた。千秋楽の本割で12勝3敗と並んだ関脇貴景勝(千賀ノ浦)との優勝決定戦を制し、賜杯を受け取ると両国国技館は大歓声に包まれた。

 優勝決定戦では正面から強く当たり、鋭く前へ。もろ差しになると一気に寄り切った。相手に何もさせなかった完勝劇には文句のつけようもない。8日目の本割では貴景勝に突き2発から土俵際まで追い込まれ、粘るもそのまま押し出されて苦杯をなめた。1週間後、運命的な流れでやってきた再戦で見事にリベンジを果たした。

(Martin Leitch/gettyimages)

 館内で行われた土俵横での優勝インタビューでは「そろそろ皆さんの期待に応えられるように11月場所で決めたいなと思います」。昇進の期待される来場所での大関取りを誓った。大関取りの目安とされる3場所33勝に到達するためには、来場所で12勝以上をあげる必要性がある。他にも優勝や優勝争いを最後まで繰り広げたり、白星をあげた相手についても考慮されたりするなど多くの要素が大関昇進の判断材料となるだけに、来場所にかける御嶽海の思いは早くも熱量が高まっているようだ。

 一方の貴景勝も下馬評を覆す奮闘で最後まで優勝争いに加わり、今場所を大いに盛り上げた。関脇陥落から1場所で10勝以上をあげたことで現行のかど番制度に従い、大関返り咲きも決めた。5月の夏場所で右膝靱(じん)帯を損傷し、途中休場。7月の名古屋場所も全休し、さらには一部週刊誌で貴景勝親子と千賀ノ浦部屋の〝確執〟が報じられるなど公私ともに逆境に立たされていた。千賀ノ浦親方とは右膝を痛めた後、強行出場するか否かで意見の相違があり、ここでも溝が生じていたとささやかれている。しかし、こうした土俵内外のマイナス要素を今場所の頑張りで見事にねじ伏せてみせた格好だ。

 だが、幕引きは残念ながら最悪の形で終わってしまった。優勝決定戦で敗れ、大関返り咲きとの同時Vを達成できなかったばかりか、左胸付近を負傷した。千賀ノ浦親方ら同部屋関係者の話によれば、軽傷ではない模様だ。10月5日からの秋巡業の参加は見送られることになりそうで、来場所への影響も懸念される。せっかく大関返り咲きを決めたにもかかわらず、貴景勝はまたしても〝爆弾〟を抱え込むことになってしまった。

 しかも左胸付近の負傷を患った相手が御嶽海だったことで「またか…」と思った人は多かっただろう。右膝を痛めたのは5月の夏場所4日目で組まれた御嶽海戦だったからだ。いずれにしても貴景勝には、じっくり休んで11月の九州場所で何とか万全な形で土俵に上がってほしいと願うしかない。

「両横綱が休んでいる。3敗、4敗の優勝者ってちょっと物足りない」

 今場所は26歳の御嶽海、そして23歳の貴景勝と2人の若い世代が土俵上でしのぎを削り、千秋楽まで優勝が決まらず目の離せない戦いが続いた。それでも大相撲観戦歴も長い、某コメンテーターが千秋楽当日に放映されたテレビ番組で「両横綱が休んでいる。3敗、4敗の優勝者ってちょっと物足りない」と発言するなど、ネット上では物議を醸していた。

 この発言に対して四の五の言うつもりはない。ただ「両横綱が休んでいる」場所であったのは紛れもない事実だ。大関高安も休場していた。だから今場所優勝の御嶽海、そして準Vの貴景勝は白鵬、鶴竜の両横綱と高安が復帰してくるであろう来場所以降も主役にならなければいけない。特に白鵬に対しては引導を渡す〝介錯人〟になるぐらいの気持ちで臨んでほしいと願う。


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