2024年12月23日(月)

Wedge REPORT

2019年9月2日

 果たして「平成の怪物」の去就は――。中日ドラゴンズの松坂大輔投手が来季も現役続行の意思を貫く構えを見せている。各メディアでも報じられたように、中日の球団代表が松坂本人と会って意思を確認し、引き続き現役を希望していることを明言。球団側としては現時点で松坂との契約を「白紙」としており、今月中に行われる現場との編成会議を経て正式な判断が下される模様という。ただ、その見通しは極めて厳しいと言わざるを得ない。

(Talaj/gettyimages)

 今季の松坂は苦しい立場にいる。春季キャンプで右肩炎症を引き起こし、大きく出遅れた。7月16日の阪神タイガース戦で今季初先発し5回2失点にまとめたものの、同27日の横浜DeNAベイスターズ戦ではプロ最短の一死しか奪えず8失点KOとなり、二軍へ降格。その後は二軍戦で2度登板したが、8月上旬に右ひじの違和感を訴えた模様で関東の病院で検査を受けるなど試行錯誤の調整が続いている。

 グラウンド外でもマイナスの話題ばかりだ。春季キャンプ中にファンから腕を引っ張られ、それが右肩炎症の一因とされている。一部からは「本当はアクシデントが起こる前からケガしていたのではないか」などと疑念も向けられてしまった。

 さらに5月のリハビリ期間中には練習日だったにもかかわらず、友人の日本テレビアナウンサーとゴルフに興じ、球団からペナルティーを科せられた。

 再起をかけた中日での移籍1年目の昨季は巧みな投球術で6勝をマークし、観客動員にも大きく貢献。その結果、6500万円増となる年俸8000万円プラス出来高の1年契約となった。それだけに球団内で期待の声は大きかったが、今となっては望むべくもない。

 中には福岡ソフトバンクホークスで3年間の在籍中0勝に終わり「給料泥棒」と言われた暗黒期と重ね合わせる関係者もいるほど。「カリスマとして若手の模範となっていたのに、今季の体たらくで一気に信頼を失ってしまった」「ドラゴンズで昨季のような活躍を遂げるのは、もう無理だろう」などと見る向きが大多数を占めつつある。

 その最大の理由は現場サイドが松坂に見切りを付けかけている点だ。現場トップの与田剛監督も、周囲から優遇されながらのマイペース調整でも一向に調子の上がらない松坂には業を煮やしているようである。

 実際、チーム内からは「投手出身で独自の理論を持つ与田監督は結果が伴わないもののチーム内に新風を吹き込もうと、ここまで心血を注いでいる。くだんの『おまえ問題』など時に周りが見えなくなってしまうところもあるが、それは自分のカラーを出そうとシャカリキになっているからだ。そういう体制の中だからこそ、昨季までのように自分の預かり知らないところで周りから守られながらゆったりと調整している松坂を〝異分子〟としてとらえている」との見方も出ているぐらいだ。

 たとえ一軍に上がったとしても昨季のような〝松坂特権〟で次の登板日まで大幅な間隔を空けなければならず先発ローテ―ションに固定できなければ、戦力として計算が立たない。それではチーム内で競争意識をあおっているはずなのに他の若手投手陣にも示しがつかないだろう。松坂一人だけに特別待遇を与え続ければ、チーム内にどんどん格差が生じていく。どうやら周辺の話を総合すると与田監督は松坂獲得にゴーサインを出した森繁和前監督(現シニアディレクター)と違い、このように考えているようだ。

 かつて松坂と西武ライオンズ(現・埼玉西武ライオンズ)でバッテリーを組んだ伊東勤ヘッドコーチも「良き理解者」として助け船を出してくれそうな気もするが、現状を聞く限りそうでもない。

 チーム内で「ヘッドは思っていた以上にサバサバしていて、かなりドラスティックな人」という意見が浸透している通り、勝手知ったる関係だからといって松坂にひいき目で手を差し伸べようとする動きも皆無とのこと。

 第2回WBC(ワールド・ベースボール・クラシック)で伊東ヘッドは同職を務め、当時投手コーチだった与田監督とも今のところ関係は良好で「すべて指揮官の意向に従う」との深い忠誠心を誓っていると聞く。同じく松坂も同大会で侍ジャパンのエースだったはずだが、その〝威光〟も与田監督、伊東ヘッドにソッポを向かれているようでは残念ながら何のプラス材料にもなっていない。

 球団としては営業面を考慮した上でも人気者の松坂を来季以降、できることならば残留させたいはずだ。とはいえ、選手としての活躍が見込めなければそれも難しい。中日側の理想を言うとドラゴンズのユニホームを着たまま引退し、指導者の道を歩んでもらう流れだが、本人が現役を希望しているとあってはそのプランもご破算だろう。現場が「不要」の判断を下せば、今オフの退団は必至となる。 


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