野嶋剛が読み解くアジア最新事情

2019年9月28日

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野嶋 剛 (のじま・つよし)

ジャーナリスト

1968年生れ。ジャーナリスト。上智大学新聞学科卒。大学在学中に香港中文大学に留学。92年朝日新聞社入社後、佐賀支局、中国・アモイ大学留学、西部社会部を経て、シンガポール支局長や台北支局長として中国や台湾、アジア関連の報道に携わる。2016年4月からフリーに。著書に『イラク戦争従軍記』(朝日新聞社)、『ふたつの故宮博物院』(新潮選書)、『謎の名画・清明上河図』(勉誠出版)、『銀輪の巨人ジャイアント』(東洋経済新報社)、『ラスト・バタリオン 蒋介石と日本軍人たち』(講談社)、『認識・TAIWAN・電影 映画で知る台湾』(明石書店)、『台湾とは何か』(ちくま新書)。訳書に『チャイニーズ・ライフ』(明石書店)。最新刊は『タイワニーズ 故郷喪失者の物語』(小学館)。公式HPは https://nojimatsuyoshi.com

ゲイカップルという役柄を演じることとは?

 この映画のなかでの蔭山さんは日本人であることをまったく感じさせない。掛け合いも含めて中国語のリズムは非常に自然である。一方で、ゲイカップルという役柄を演じることについてはどう感じたのだろうか。

©Darren Culture & Creativity Co.,Ltd.

 「誰しもが男性ならば女性の一面、女性なら男性の一面があります。いまの社会に、は中性的な男性はいっぱいいる。私は異性愛者ですが、若い頃から日焼け止めやあぶらとり紙を使っているなど、美意識は強いほうで、演じるにあたっても特に違和感や抵抗はありませんでした。台湾ではメディアの取材に半分冗談で『自分が持っている少女の一面を演じた』と話しました(笑)」

©Darren Culture & Creativity Co.,Ltd.

 今年5月に同性婚が合法化された日、台湾の人々は歓喜に包まれた。その中には、蔭山さんの友人たちも含まれていたという。

 「役作りには彼らの話も参考にしました。女役、男役という意識は本人たちにはほとんどない。作り出されたステレオタイプだと彼らの話から初めて知りました。私の役は、最初は女役ということで、女性的な演出も予定されていたのですが、わざとらしいものはやめようと監督にも進言しました」

 同性婚の合法化について「異性愛者だから自分には関係ないという問題ではありません」と蔭山さんはいう。

 なぜなら、今後20年後、30年後の社会には、本作で取り上げられるような出産や養子縁組の問題など、解決しなければならない問題が次々と出てくる。それは社会全体で考えなければならない問題だからだ。

 日本人は、本作のような台湾のLGBT映画をどのように見るべきか。

「LGBT問題でアジアのなかでも台湾は一歩先をいっている。ぼくの中では対岸の話ではない。日本もかなりの同性愛者がいる。もし結婚の合法化を認めなかったらどうなるのか、認めたらどうなるのか。そうした問題をどんどん議論していくべきです。この作品が日本の未来を考えていく一つの入り口になって欲しい」

 蔭山さんは、言葉に力を込めた。

 普段の旅行などではなかなか知り得ない台湾社会の断面が映画「パオパオ」には詰まっているはずである。

 10月26日には、台湾でアジア最大級と呼ばれる恒例のLGBTパレードも開催される。今年の同性婚合法化後、初めてのパレードで、大変盛り上がることが期待される。台湾のLGBT問題に関心のある方は、この映画をみてから、台湾のパレードにも出かけてみてはどうだろうか。

公式HP:http://baobao.onlyhearts.co.jp/
『バオバオ フツウの家族』
9月28日(土)新宿 K’s cinema他 順次公開
配給:オンリー・ハーツ/GOLD FINGER
©Darren Culture & Creativity Co.,Ltd.

  
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