Washington Files

2019年9月30日

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斎藤 彰 (さいとう・あきら)

ジャーナリスト、元読売新聞アメリカ総局長

1966年早稲田大学卒業。68年米カリフォルニア州立大学バークレー校大学院修士課程修了、70年読売新聞入社。ワシントン常駐特派員を2度務めた後、アメリカ総局長、東京本社取締役調査研究本部長などを歴任。近著に『中国VSアメリカ』『アメリカはカムバックする!』(いずれもウェッジ)がある。

 ある州が時の政権の政策に反旗をひるがえすことは、それ自体、珍しいことではない。

 古くは1860年代、南部11州が連邦政府の奴隷制廃止命令に従わず、合衆国を脱退、政府軍と激突した南北戦争はその最たるものだ。

 しかし20世紀に入ってからも、60年代には、南部アラバマ州がジョンソン民主党政権の進める人種差別撤廃政策に徹底して抵抗し、最後は政府軍部隊が出動、白人過激組織と黒人ブループの衝突収拾にあたる騒ぎとなった。

 最近では、2014年12月、テキサス州ほか24州が、不法移民の国外退去問題に関連してオバマ大統領(当時)が執行猶予の行政命令を発令したことを不服とし、訴訟を起こしたケースなどがある。

 ただ、連邦政府が打ち出してきたさまざまな政策めぐり、ここまで徹底して戦い続ける州はカリフォルニア以外に例を見ない。

 その背景にあるのが、同州とトランプ政権がそれぞれ抱える異なる特殊性だ。言い換えれば、両者は“水と油”の関係にある。

「メトロ(都市社会)vs レトロ(過去社会)の対決」

 カリフォルニア州は人口4000万の全米最大州であるだけでなく、多くのヒスパニック、アジア系、黒人など様々な少数民族を抱え、50州の中でも最もリベラルで、なおかつ未来志向の成長産業に支えられた都市型の巨大州だ。これに対し、トランプ政権の支持基盤は、中西部のラストベルト(さびついた工業地帯)や農村を主体としたWASP(アングロサクソン系白人でプロテスタント)から成り、なおかつ高齢層の有権者が圧倒的に多い。このような対極にある関係を「メトロ(都市社会)vs レトロ(過去社会)の対決」と評する社会学者もいる。

 トランプ政権にとって、カリフォルニアはたんなるひとつの州とはいえ、経済規模もGDPでアメリカ、中国、日本、ドイツに次ぐ世界第5位の“大国”であるだけに、侮りがたい存在だ。

 しかも今回、同州が連邦政府相手に起こした自動車排ガス規制問題訴訟では、他の23州も同調している。その中には、イリノイ、マサチューセッツ、メリーランド、ニューヨークといった大票田州のみならず、2016年大統領選でトランプ当選のカギとなった中西部のウィスコンシン、ミシガンそしてペンシルバニア各州が含まれている。

 地球温暖化、大気浄化といった環境問題は一部の州にみにとどまらず、全米各地で関心がますます高まりつつあるだけに、訴訟の結果いかんでは、トランプ氏が再選をめざす来年大統領選の趨勢にも少なからぬ影響を与えることになるだろう。

  
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