Washington Files

2019年9月30日

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斎藤 彰 (さいとう・あきら)

ジャーナリスト、元読売新聞アメリカ総局長

1966年早稲田大学卒業。68年米カリフォルニア州立大学バークレー校大学院修士課程修了、70年読売新聞入社。ワシントン常駐特派員を2度務めた後、アメリカ総局長、東京本社取締役調査研究本部長などを歴任。近著に『中国VSアメリカ』『アメリカはカムバックする!』(いずれもウェッジ)がある。

 これに対し、国内外の自動車メーカーの“カリフォルニア・ルール”をめぐる対応は分かれている。

 フォルクスワーゲン、BMW、フォード、Hondaの4社は去る7月、2026年までにそれぞれ自社製乗用車の燃費を米政府決定の基準よりはるかに厳しい1ガロン当たり51マイルとすることで合意したと発表した。全米最大人口を誇り、車の最大市場であるカリフォルニアの基準を満たさない場合、同じ車種で異なる2種類の基準に対応した生産を余儀なくされる事態を回避する苦肉の策とみられている。

 しかし、ウォールストリート・ジャーナル紙によると、4社以外のメーカーは態度を明確にしておらず、とくに電気自動車の開発に力を入れているGMは、従来タイプの乗用車のさらなる燃費改善のスケール・メリットに疑問を呈し、そのために追加投資を余儀なくされることに躊躇しているという。

トランプ政権による「規制緩和」という名の反環境主義

 カリフォルニア州 vs トランプ政権の戦いは今回が初めてではない。

 ロサンゼルス・タイムズ紙によると、同州がトランプ政権発足以後、2018年7月までの間に、環境問題はじめ移民、教育、健康保険改革などを争点として連邦政府相手に訴訟を起こした件数は38件、そして今年5月時点で50件に達した。このうち、乗用車、換気扇などを対象としたエネルギー、燃費規制関連は24件を占め、うち15件で連邦政府が敗訴している。このほか、職場安全基準、ディーゼル・トラック排ガス規制など10件については、判決言い渡し前に連邦政府側が規制緩和措置を取り下げたという。

 これらの多くの訴訟のうち、州政府、連邦政府のいずれかにより控訴中の案件も少なくない。しかし、とくに環境問題をめぐるこれまでの法廷闘争では、トランプ政権による「規制緩和」という名の反環境主義がかなり苦戦を強いられてきたことは事実だ。

 この点について、ベセラ州検事総長はローカル紙とのインタビューで「わが州が次々に勝利を収めているのは、独自に実施している環境基準が、きちんとしたサイエンスに依拠したものだからだ。トランプ政権は科学的根拠なしに政策を打ち出している点に問題がある。結果的に彼らはパンチを食らい続けフラフラの状態だ」と語り、意気盛んなところを見せている。

 また、ニューヨーク大学法科大学院政策研究所の調査によると、これまでトランプ政権が進めてきたさまざまな規制緩和をめぐり、各州で起こされた訴訟39件のうち、37件について連邦政府側が敗訴しており、専門家は「近年、規制緩和措置をめぐりこれほどみじめな敗北を期した大統領はほかにいない」とさえコメントしている。

 それにもかかわらず、就任前からカリフォルニア州に対する敵意をむき出しにしてきたトランプ大統領は、譲歩の構えを全く見せてない。

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