Washington Files

2019年9月17日

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斎藤 彰 (さいとう・あきら)

ジャーナリスト、元読売新聞アメリカ総局長

1966年早稲田大学卒業。68年米カリフォルニア州立大学バークレー校大学院修士課程修了、70年読売新聞入社。ワシントン常駐特派員を2度務めた後、アメリカ総局長、東京本社取締役調査研究本部長などを歴任。近著に『中国VSアメリカ』『アメリカはカムバックする!』(いずれもウェッジ)がある。

(iStock.com/flySnow/Purestock)

 トランプ政権発足以来、アメリカの国際的威信と信頼の低下が目立っている。外交・安全保障から貿易・通商そして環境保護にいたるまで、次々に打ち出されてきた破天荒ともいえる政策推進が世界を揺さぶり続けてきたことが主たる原因だ。だが、大統領の言動とその政治スタイルを見る限り、今後も変化の気配はいささかも見られない。

 世界は今日のアメリカをどう見ているか―米有力調査機関ピュー・リサーチ・センターは昨年10月、主要25か国の市民2万6000人の意見を集約した「アメリカの国際イメージ」に関する大がかりな意識調査結果を発表した。

(Bo Zaunders/gettyimages)

 この調査での主なハイライトは以下のようなものだった:

  1. 大多数の回答者が、世界問題に果たすアメリカの役割を不安視し「外交政策決定上、自国の利益以外、多くの国々の利害関係への配慮を欠く」と考えている
  2. 10年前にくらべ、アメリカにおける個人の自由、人権に対する尊敬度が減退した
  3. トランプ政権発足以来、アメリカに対する不信感はとくに欧州同盟諸国間で目立っており、トランプ大統領に対する「信頼度」はドイツでわずか10%、フランスで9%、隣国のカナダでも25%にとどまった
  4. オバマ政権当時と比較したアメリカに対するEU内での「好感度」も、ドイツで27%、フランスで25%、英国で11%それぞれ減少した。EU全体での「好感度」も過半数を割り、43%だった
  5. アメリカとは対照的に、過去10年の世界舞台における中国パワーの存在については、70%がその役割の拡大を実感している

 このようなアメリカに対するマイナス・イメージは、米ギャラップ社が今年2月、世界130か国で実施したアメリカのリーダーシップに関するグローバル評価「US Global Approval Rating」でもほぼ同様の内容となっている。

 具体的には、

  1. アメリカに対する「支持率」は48%だったオバマ政権当時と比較して31%にまで低下した
  2. 欧州全体ではオバマ政権当時44%だったのに対し、トランプ政権下で24%と極端に低下した
  3. 国別の対米「支持率」を見ると、ノルウェー12%、スウェーデン13%、オーストリアおよびポルトガル14%、ベルギーおよびスイス16%、ドイツ17%という深刻な結果となった
  4. 逆に欧州全体における「不支持率」は59%に達し、ロシアに対する評価と並んだ

 などの点が浮き彫りになった。

 上記二つの意識調査を子細に比較した場合、ニュアンスに多少のずれがあるものの、ひとつだけ明確に共通した部分がある。それはすなわち、世界におけるアメリカの信用がトランプ政権発足後にガタ落ちになったという点だ。

 その主たる原因について、ギャラップ社は調査結果の解説記事の中で、気候変動に関する国際取り決め「パリ協定」およびイラン核合意からの一方的離脱、あいつぐ欧州同盟諸国批判など、過去、国際社会を動揺させた一連のトランプ政権外交との関連に言及している。

 しかし、その後も今日にいたるまで、大統領個人の政治スタイルに絡んだトランプ外交の混乱は続いており、世界の対米不信は深まるばかりだ。

 今年に入ってからの、いくつかの事例を具体的に見よう。

NATO、G7軽視

 米下院共和党は今年1月、トランプ政権によるNATO(北大西洋条約機構)からの離脱の動きを封じる決議案を賛成3分の2の圧倒多数で可決した。これは大統領が個人的にたびたびNATO批判を繰り返すだけでなく、脱退の意向まで側近らに示唆してきたことを踏まえ、事前にその動きを封じる狙いだったが、野党民主党でなく、与党議員の大多数が政権に異議を唱えた稀有なケースとして注目された。

 トランプ大統領による国際機構・グループ軽視は去る8月、仏ピアリッツで開催されたG7サミットでも際立った。過去毎回、最終日に発表されるのが恒例だった「共同声明」は米政府の意向が十分反映されないことに不満を抱いたトランプ大統領の反対により、G7としては初めて見送られ、代わって議長国のマクロン仏大統領が閉幕間際に大慌てでまとめた型通りの「首脳宣言」でお茶を濁した。そればかりか、大統領は「気候変動」をテーマにした会合には1人だけ出席せず、G7としての意思統一の欠如を露呈させるかたちとなった。

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