ベネズエラ危機対応
トランプ政権は、マドゥロ独裁政権と野党指導者グアイド氏との対立で混乱が続く南米ベネズエラ情勢について、今年1月、グアイド氏支持を鮮明に打ち出して以来、大統領自身が政権転換のための「軍事介入」の用意も表明してきた。その裏には、ベネズエラ国内の経済状況悪化などによって、「マドゥロ政権崩壊も時間の問題」とのホワイトハウス内での楽観的見通しがあったとされる。しかしその後最近に至るまで、ロシアそして中国が現政権支援に回ったことなどもあり、こう着した状況が続いており、今後の見通しは全く立っていない。
この問題で大統領は、「あとひと押しで政権転覆が可能」と主張してきたボルトン大統領補佐官(去る9月10日解任)を個人的に酷評する場面もあったとされる。
対中関税戦争における一貫性欠如
昨年以来、トランプ政権による対中国製品に対する追加関税措置に端を発する米中貿易戦争では、今年に入ってからも大統領個人のスタンスの揺れが世界経済の混乱要因ともなっている。
今年1月31日、ワシントンにおける事態収拾策を模索する米中実務者協議終了後、大統領は「2月にも習近平国家主席と直接会談し、合意をめざす」と希望的観測を述べたが、2月7日には「関税一時凍結の期限が3月1日に切れるまでは会談しない」として前言を翻した。それ以来、両首脳は8月、G20大阪サミットの場でのごく短時間の会話以外、懸案解決のための本格的な米中首脳会談には至っていない。
6月26日には、大統領は「双方間の“一時休戦”を守り、追加課税はしない」と約束したが、7月16日には、3250億ドル相当の中国製品に対する関税を10%から25%に引き上げると言明した。
しかし、この関税引き上げによって、自らの支持基盤である中西部農村地帯の白人低所得者層に多大な影響が及ぶことを懸念した大統領は、8月13日には、追加課税対象からパソコン、スマホ、ビデオデッキ、シューズなどの品目を除外すると発表した。
8月25日には、大統領が一部メディアに「対中関税について考え直している」と語り、ホワイトハウス・スタッフが直後にこれを打ち消すなど政府部内での混乱ぶりを見せた。