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2019年10月8日

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田村明子 (たむら・あきこ)

ジャーナリスト

盛岡市生まれ。1977年米国に単身留学し、1980年から現在までニューヨーク在住。著書に『ニューヨーカーに学ぶ軽く見られない英語』(朝日新書)、『知的な英語、好かれる英語』(生活人新書)、『女を上げる英会話』(青春出版社)、『聞き上手の英会話』(KADOKAWA/中経出版)など。翻訳書も多数。フィギュアスケートライターとしても知られており、『挑戦者たち-男子フィギュアスケート平昌五輪を超えて』(新潮社)で2018年ミズノスポーツライター賞受賞。

アイスダンスの面白さは?

 そもそもアイスダンスとは、どういう競技なのか。

 アイスダンスが競技になった歴史は、それほど古いものではない。世界選手権に初めて参加したのが1952年、オリンピック競技に加わったのは1976年で、4種目のうち最も新しい。本来は社交ダンスを氷の上で表現していたもので、当初はリクリエーションとして特にイギリスなど欧州で親しまれていたという。

 元々コンパルソリーダンス(各種ワルツ、タンゴなどパターンダンスの規定)、オリジナルダンス、フリーダンスの3部で競われていたが、2010年を最後にコンパルソリーが競技から除外され、現在では一部パターンダンスを取り込んだリズムダンスとフリーダンスの2部で競う。

 社交ダンス色は当初よりもかなり薄れ、現在ではダンススピン、ツイズルシークエンス、ダンスリフトなどアスレチックな要素が加えられて、より競技スポーツらしくなった。フリーではストーリー性のある作品や、バレエやコンテンポラリーダンス、時にはディスコやヒップホップなどをアレンジした多様なプログラムを見ることができる。

 ちなみにスケートにあまり馴染みのない人からは、ペアとアイスダンスをどうやって見分けるのかと聞かれることもある。

 もっとも大きな違いは、アイスダンスはジャンプがないこと。正確に言うと1回転以上のジャンプは、ルールで禁止されている。ジャンプがないぶんスケーティングのクオリティが勝負の決め手となり、年季の入ったスケートファンの中には4種目の中でアイスダンスが最も面白いという人も少なからずいる。

村元&高橋が吹き込む新風

 今回の高橋の転向は、村元哉中のオファーがきっかけだったという。彼女はクリス・リードと組んで2018年世界選手権11位、四大陸選手権3位と、日本のアイスダンサーとして歴代最高の結果を出した。だが2018年夏にリードとの組を解消し、新しいパートナーを捜しているところだった。

 実は村元自身、2014年に女子シングルからアイスダンスに転向したばかりである。自ら短期間でアイスダンスに順応しただけに、シングル選手である高橋に声をかけることにためらいはなかったのだろう。

 一方高橋は、当初は自分で良いのかという想いが先にたったという。

 「ぼくは(アイスダンスは)初心者。(村元は)もっと上手い人と組んだほうが素晴らしいカップルになるだろうなと思い、面白そうとは思いましたが、躊躇していました」

 だが元々引退後は趣味でアイスダンスをやってみようかと思っていたほど、アイスダンスに興味は持っていた高橋。7月に初めて一緒に滑ってみて、「楽しい」と感じたことが決め手になった。

 日本では、ペアやアイスダンスを希望する、特に男子スケーターが圧倒的に不足している。またリンク環境、指導者の不足という問題もある。

 競技人口が増えないと、強くならない。強くならないと、希望者が増えないという悪循環が続いてきた中で、高橋のアイスダンス転向は日本のカップル競技に新たな新風を吹き込むことになるだろう。

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