WEDGE REPORT

2019年10月8日

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田村明子 (たむら・あきこ)

ジャーナリスト

盛岡市生まれ。1977年米国に単身留学し、1980年から現在までニューヨーク在住。著書に『ニューヨーカーに学ぶ軽く見られない英語』(朝日新書)、『知的な英語、好かれる英語』(生活人新書)、『女を上げる英会話』(青春出版社)、『聞き上手の英会話』(KADOKAWA/中経出版)など。翻訳書も多数。フィギュアスケートライターとしても知られており、『挑戦者たち-男子フィギュアスケート平昌五輪を超えて』(新潮社)で2018年ミズノスポーツライター賞受賞。

 9月29日、高橋大輔が今季の全日本選手権を最後に、男子シングルスケーターとしての競技活動を終えて、村元哉中と組んでアイスダンスに転向することが発表された。

 2010年バンクーバーオリンピックでは銅メダルを手にし、2010年世界選手権優勝、そして2012年GPファイナル優勝。高橋はこれまで、日本男子として数々の初の快挙を成し遂げてきた。これほどのキャリアを築き上げたシングル選手が、アイスダンスに転向するというのは世界でも前例のないことである。

アイスダンスへの転向を発表した高橋大輔(松尾/アフロスポーツ)

高橋の円熟したスケート技術を引き出す

 「高橋選手はおそらく30歳を超えて身体の使い方も成熟し、落ち着き、以前よりも氷と一体化できる段階にいます」

 そう語るのは、現在カナダのトロントでコーチをする傍ら、日本人として始めて国際スケート連盟の技術審査委員になった天野真だ。

 天野は1994/1995年全日本タイトルを手にし、シングル引退後にペアに転向して荒井万里絵と1998年長野オリンピックに出場した。アイスダンスとペアという違いはあれど、彼自身、種目を変えてチャレンジした体験があったからこそ、見えてきたものもあったという。

 「20代から30代にかけて、確かに体力はある程度落ちていく。でもその分、身体の変化に対応して、力を抜いて素直に滑ることを覚えていくのです。彼は本当にスケートの楽しさを味わえる年齢に達してきた、と言っても良いかもしれません」

 クラシックバレエでも、若い頃は大きなジャンプやピルエットの回転など高い技術を売り物にしていたダンサーが、年齢とともに円熟して、人々の心に染み入るような演技力を身につけていくということは珍しくない。

 「高橋は一度競技から引退した間に、舞台にも立って違う世界を経験してきた。そのような幅広い経験を楽しめたことなども、アイスダンスにつながっていったのだろうと思います」

 シングル競技はどうしても、ジャンプを成功させることが最優先となる。だが現在の高橋のスケーティング技術なら、アイスダンスでこそ本領を発揮できるのではないかと天野は期待している。

 「彼のスケーティングのブレードの傾斜、カーブなど、元々きれいなスケートからさらに洗練されていくと思います」

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