韓国検察、歴代大統領を訴追
話を韓国に戻す。
考えてみれば、韓国の法務vs検察は、最初から勝負はついていたというべきかもしれない。 韓国でも日本同様、検察の権力が並外れて強いからだ。歴代大統領のほとんどが退任後、在任中のスキャンダルで訴追されていることからも、それがわかる。
韓国初の女性指導者、朴槿恵前大統領は、政権に巧みに取り入った友人の暗躍を許し、大企業からの収賄などで弾劾、罷免、起訴され懲役25年の判決を受け、最高裁で審理中だ。
前任の李明白は収賄、背任、職権乱用などで起訴され、その前任、盧武鉉も兄や側近が不正資金疑惑をもたれ、本人も検察の事情聴取を受けた後、自ら命を絶った。
1980年代から90年代にかけて政権を担った軍人出身の全斗煥、盧泰愚はいずれも不正蓄財、政治資金隠匿などで実刑判決を受けた。
文大統領が検察改革に意欲を燃やすのは故盧武鉉元大統領の自殺が、十分な証拠を持たない検察による不当捜査の結果と信じているからという見方がある(毎日新聞電子版10月6日など)。
盧武鉉政権当時、文在寅氏はその最側近として、青瓦台(大統領官邸)の民情首席秘書官という要職に就くなど重用されていた。ボスを追い詰めた検察に遺恨を持っているとしたら、東京地検検事正、馬場義続が自らを引き立ててくれた木内曽益を放逐した法務総裁、大橋武夫に反撃した構図そのままといっていい。
チョ辞任によって、韓国の司法対立はとりあえずの決着を見たが、大統領がなお執念を燃やす検察改革の行方は不透明になってきた。故大統領の遺恨を晴らすことができずにいる文大統領の胸中は穏やかならざるものがあるだろう。
日本にとって、今回の事態はあくまでも韓国の内政問題だった。しかし、気になることがある。日本の対韓輸出管理強化の問題だ。
法務・検察の抗争の間、その陰に隠れて下火になっていた日本非難が、結末を見たことで韓国内で再び再燃するのではないかということだ。
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