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2019年11月9日

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出井康博 (いでい・やすひろ)

ジャーナリスト

1965年、岡山県に生まれる。ジャーナリスト。早稲田大学政治経済学部卒業。英字紙「ニッケイ・ウイークリー」記者、米国黒人問題専門のシンクタンク「政治経済研究ジョイント・センター」(ワシントンDC)客員研究員を経て、フリー。著書には、『移民クライシス 偽装留学生、奴隷労働の最前線』(角川新書)、『ルポ ニッポン絶望工場』(講談社+α新書)、『長寿大国の虚構 外国人介護士の現場を追う』(新潮社)、『黒人に最も愛され、FBIに最も恐れられた日本人』(講談社+α文庫)などがある。

留学生の割合5割ルールの撤廃

 もともと専門学校は、留学生を自由に受け入れられたわけではない。以前は留学生の割合を定員の5割以下とするよう規定があった。しかし、そのルールは「留学生30万人計画」が始まった2年後の2010年、文部科学省によって撤廃された。以降、日本人の学生不足に直面する学校では、留学生頼みが加速していく。

 『読売新聞』(2018年10月8日朝刊)によれば、在校生の9割以上が留学生という専門学校は全国で少なくとも72校、全員が留学生という学校も35校に上っている。こうした学校の大半は、“偽装留学生”の受け入れで経営を維持していると見て間違いない。

 しかも問題は専門学校に留まらない。私立大学の半数近くは定員割れの状態だ。学力や日本語能力を問わず留学生を受け入れ、経営維持を図ろうとする大学は全国各地に存在する。そして留学生の失踪や学費の返還請求といった問題を抱えているのも、東京福祉大や上野法科ビジネス専門学校に限ったことではない。

 ダワ君に関しては、上野法科ビジネス専門学校が入学前に彼の経済力を精査していれば、学費返還のトラブルも避けられた。だが、精査すれば留学生は集まらず、学校経営に支障が出る。そのため経済力など軽視して留学生の入学を認め、とりあえず1年分の学費を徴収した可能性がある。先に学費さえ取っておけば、留学生のビザが更新されず帰国となっても学校側に痛手はない。違法就労にしろ、留学生の責任として言い逃れできる。

 こうして弱い立場の留学生につけ込むやり方に、嫌悪感を覚えるのは筆者だけだろうか。上野法科ビジネス専門学校には、学費の返還問題や留学生の選考方法、受け入れ実態などについて回答を求めたが、一切の取材は拒否した。

 借金漬けの“偽装留学生”の受け入れは、日本語学校から専門学校、大学へと拡大していく一方だ。そんな現状にメスが入る日は来るのだろうか。

 東京福祉大での問題発覚を受け、法務省出入国在留管理庁などが対策を打ち出した。日本語学校に対しては、留学生の出席率やアルバイト時間をしっかり管理するように求め始めている。また、除籍や退学、所在不明者を多く出し続けた大学や専門学校には、留学生の受け入れを停止させる方針だ。しかし、すべては「対処療法」に過ぎない。

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