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2019年11月9日

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出井康博 (いでい・やすひろ)

ジャーナリスト

1965年、岡山県に生まれる。ジャーナリスト。早稲田大学政治経済学部卒業。英字紙「ニッケイ・ウイークリー」記者、米国黒人問題専門のシンクタンク「政治経済研究ジョイント・センター」(ワシントンDC)客員研究員を経て、フリー。著書には、『移民クライシス 偽装留学生、奴隷労働の最前線』(角川新書)、『ルポ ニッポン絶望工場』(講談社+α新書)、『長寿大国の虚構 外国人介護士の現場を追う』(新潮社)、『黒人に最も愛され、FBIに最も恐れられた日本人』(講談社+α文庫)などがある。

(bee32/gettyimages)

 法務省入管当局が、留学生の違法就労への監視を強めている。今年3月に東京福祉大学で起きた「消えた留学生」問題が影響してのことだ。留学ビザの更新時に「週28時間以内」を超える就労が見つかり、母国への帰国を余儀なくされる留学生も増えている。

 ブータン人留学生のダワ君も、7月に在留期限を迎えた留学ビザの更新が不許可となった。もはやブータンに帰国するしかないが、その前に在籍する上野法科ビジネス専門学校(千葉市)に対して要求があった。入学前に支払った初年度の学費65万円の一部を、返還してもらいたかったのだ。

 日本への留学時に背負った借金は、まだ60万円以上も残っている。しかも母国に戻っても仕事が見つかる当てはない。たとえ一部でも学費が戻ってくれば、借金返済の助けにはなる。

 ダワ君が学費の返還を求めた気持ちもわかる。学校には3カ月ほどしか在籍していないのである。しかし上野法科ビジネス専門学校は、学費の返還に応じようとはしなかった。入学前にダワ君が署名した「誓約書」を盾にしてのことだ。確かに「誓約書」には、こんな一文がある。

 「法律違反等により在留期間更新不許可になった場合、学費の返金は一切求めません。」

 誓約書は、ダワ君が在籍していた日本語学校に送られてきた。そして日本語学校の職員から十分な説明も受けず、ダワ君は言われるままに署名していた。

 たとえ説明があっても、彼は署名していたことだろう。借金返済のためには、進学先を確保したうえで、アルバイトを続ける必要があった。

 ただし、こうした一文の存在からして、上野法科ビジネス専門学校が留学生のビザ更新不許可を想定し、予防線を張っていたとも受け取れる。同校は東京福祉大と同様、多くの“偽装留学生”の進学先となっている疑いがある。

 上野法科ビジネス専門学校には「情報ビジネス学科」「日本語教師学科」「日本語学科」という3つの学科がある。ダワ君の在籍する「情報ビジネス学科」のクラスは、27人全員が留学生だった。同学科は全部で6クラスあるが、他のクラスにも日本人がいる様子はなかった。

 専門学校や大学の授業を理解するには、最低でも日本語能力試験「N2」レベルの語学力が必要だ。しかし、ダワ君によれば、クラスに「N2」合格者は1人もいない。クラスメイトの出身国は約半数がネパールで、他にもベトナムやウズベキスタンなど“偽装留学生”を数多く送り出している国が並ぶ。しかも1人のネパール人留学生は学校から失踪し、加えてベトナム人の女性留学生はビザが更新不許可となって帰国したという。

 上野法科ビジネス専門学校が設ける「日本語学科」は、日本語学校に相当するコースだ。こうして学校内に日本語学校を設置し、留学生を内部進学させるビジネスモデルは、専門学校や大学で広まりつつある。あの東京福祉大もそうだった。“偽装留学生”の急増でバブルに沸く日本語学校業界にあやかろうしているのだ。

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