2024年4月25日(木)

世界の記述

2019年11月1日

なぜ香港警察は暴力的になったのか?

 デモが長期化している大きな要因として、香港警察による過剰な暴力が大きい。催涙弾などを連発し、逮捕者を過剰に警棒で殴り、無抵抗のデモ隊にペッパースプレーをかけるなど、警察は正当だと主張するが誰が見ても目に余る行為が行われている。香港警察は、1970年代後半に入ってから香港市民に慕われていたが2014年の雨傘運動を境に「市民のための警察から、体制のための警察にかじを切った」ことが大きい。実際、現場レベルで彼らに何が起こったのか?

 「洗脳的なものもありますが、トレーニングというより署内の雰囲気がそうさせています。同僚同士の会話で、デモで遭遇した腹立たしいことなどを共有しますよね。しかも人からの話ですしバイアスがかかるのもあります。実は数年前、警察官の内部文書がリークされまして、そこには私たちについて『あそこの人権団体はちゃんと処遇する必要はない』などと書かれていました」と彼女は実態を語る。

 また、「香港には警察の行いについての苦情処理を行う独立監察警方処理投訴委員会(IPCC)という組織があります。IPCCのトップが、警察官が通常肩につけているIDナンバーを隠していることはふさわしくないと勧告しましたが、香港警察署のトップである盧偉聰(ステファン・ロー)署長はそれを無視しました。それが、警察が暴力的になった最初のステップです」と、身分を隠すようになったのが転機だったと明かした。

 「正直言いまして、私は警察官の精神状態についても危惧しています。十分な休息をとっていないからです。メディアの人間に対する暴力行為などを見てもプロフェッショナリズムを忘れているきらいがあります。何か偶発的なことで、警察・デモ隊に死者が出るのではないかと心配しています」

逮捕されたらどうすればいいのか?

 警察署内の取調室で逮捕者に対してどのような事が起こっているのだろうか。「国際人権NGOのアムネスティが9月に逮捕された人に調査を行い、レポートを出したのですが、それによると暴力行為やレーザーポインターを目に当てる、ケガをしていても長時間病院に連れて行かないなどが挙げられています」

「Fight For Freedom, Stand With HK」(自由のために戦おう、香港と一緒に立ち上がろう)はデモでよく叫ばれるシュプレヒコール

 ここでもし逮捕された場合、どうするべきか聞いてみた。「まず、弁護士や家族に連絡する権利があります。警察は『弁護士は高いよ』などと言ってくるでしょうが……。また、暴力は認められないですし、ケガをしていたら治療を受ける権利もあります。黙秘権ももちろんありますし、通訳を呼んでもらう権利もあります」。拘留は警察が延長を求め、かつ認められない限り最大で48時間だ。


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