中日側から来季残留を望まれ、契約延長のオファーを提示されたものの松坂は応じることなく退団。前監督でシニアディレクターを務めていた森繁和氏と編成部国際渉外担当・友利結氏の理解者2人が揃って9月いっぱいで球団を去ると「僕もいてはいけない」と口にし、一方的に中日のオファーを足蹴にしてしまった。
確かにドラゴンズ入団の道を作ってくれたのは、この2人だ。でも路頭に迷いかけていたところでチャンスを与えてくれたのだから、中日球団に残って現役最後まで恩返しするという選択肢はあったほうがいい。しかしながら松坂は悩む様子もほとんど見せず、あっさりと去ってしまったことで竜党からは落胆の声も聞かれた。
今季は2試合に登板しただけで0勝1敗、防御率16・88。キャンプ中にファンから手を引っ張られたことで右肩を故障し、一軍の戦力にはまったくなれなかった。しかも5月にはリハビリ中二軍の練習日にも関わらずゴルフに興じていたことが発覚し、批判の嵐にさらされている。
中日1年目の昨季こそ11試合に登板し、6勝4敗、防御率3・74でカムバック賞も受賞したものの、一転してお荷物状態のロートルに成り下がってしまった。それでも減額制限を超える条件提示だったとはいえ、中日側が自ら歩み寄って残留交渉に乗り出そうとしたものの突っぱねられたとあっては周囲から「最初から松坂は西武とデキていたのでは」と勘繰られてしまうのも無理はない。中日の球団内からは次のような厳しい言葉も飛び出している。
「ドラゴンズは球団として引退後、松坂に対して指導者の道も用意していた。でも、これでその線はぷっつりと切れてしまったでしょう。人気面で大きな悩みを抱えている中日球団としては大きな痛手。現場首脳陣も右肩痛の影響でほぼ戦力になれなかった松坂にはシーズン中から今後の方針について話し合いをしようとしたにもかかわらず、のらりくらりとかわされて応じる気配がまるでなかったと嘆いていた。それで結末が、この退団劇ですからね。だから当事者から『もっと筋を通してほしかった』と怒りのブーイングが出るのも当然ですよ。まあ、もう終わったことだから勝手にしてくれという感じですが」
最後の花道
逆に言えば、西武側は松坂に最後の花道を用意する意味でUターンを認めたということだろう。かつて怪物と呼ばれた右腕も来年9月で40歳を迎える。来季限りで引退となり、そのまま翌年からコーチとして入閣するシナリオも考えられなくはない。とはいえ、中日在籍のラストイヤーにゴルフ騒動や退団時にハレーションを引き起こしたことによって今の松坂に対する世間からの風当たりは強い。身辺調査まで遂行してコンプライアンス遵守の徹底化を図る西武球団が、厳しい立場に追いやられている松坂を古巣としてどのようにマネジメントしていくのか。入団が正式発表される今月下旬以降、注視していきたい。
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