Wedge REPORT

2019年10月28日

»著者プロフィール
10月5日、酷暑を避けるため夜中に開催された世界陸上のマラソン(REUTERS/AFLO)

 本当にこれで盛り上がるのだろうか。東京五輪のマラソン、競歩の札幌変更案は、いよいよ決定事項となりそうな雲行きだ。27日には複数のメディアによって、大会組織委員会がレースの発着点を札幌市中心部の大通公園とする案を検討していることも報じられた。

 IOC(国際オリンピック委員会)のトーマス・バッハ会長がマラソンと競歩のコース変更を突如口にし、大騒動へとぼっ発。どうやら札幌変更案についてはIOCが森喜朗会長を筆頭とする大会組織委員会と水面下で話し合いを重ねていたらしい。これに関して事前に何も知らさられていなかった東京都の小池百合子知事がブチ切れたのも当然の話だ。

 もちろん五輪の話なのだから管轄するIOCに決定権があるのは承知している。大会関係者の間からは、森会長が犬猿の仲ともっぱらの小池都知事にあえてギリギリまで話さなかったのではないかとのウワサまで聞こえてきている。だが、そんなお偉方の力関係のことなど正直に言わせてもらえば、我々一般庶民は知ったこっちゃない。どんな理由があるにせよ、多大な迷惑を被るのは日本国民、特に納得のいかない無駄使いで結果的に税金負担を強いられる東京都民である。

 今月初旬までカタール・ドーハで行われた世界陸上で酷暑のためマラソンと競歩のスタート時間を深夜に設定したにもかかわらず、女子マラソンではリタイアする選手が半数近くにまで及んだ。年々暑さの増す真夏の東京で五輪のマラソンと競歩を強行すれば、今度こそ事故が発生してしまうかもしれない。だからアスリートファーストを唱え、東京に比べれば5~6度ほど涼しい札幌に変更したいというIOC側の主張は、まあ百歩譲って理解しよう。

 でも最初から東京がクソ暑いことは誰もが分かっていたはずだ。だったら五輪の東京開催が決まった時点でIOC以下のお偉方たちはマラソンと競歩の札幌変更案を打ち出しておくべきだったし、それがどう頑張っても難しかったというのであれば、もとから五輪の東京招致なんてしなきゃよかったとさえ個人的には思っている。

 多くのメディアも問題提起してすでにご存じの通り、東京都はマラソンコースの遮熱道路化など暑さ対策として約300億円を投じている。東京都民の血税がここに注がれたのに、マラソンも競歩もやらないとなったら一体何のためにこれだけの額をぶち込んだのかということになるだろう。多くの都民も怒り心頭だと思う。

 「ヒートアイランド化の抑止につながるから決して300億円が無駄となるわけではない」なんていう言い訳じみた指摘もあるが、それならこれだけの巨額を災害対策費に投じたほうがよっぽど理にかなっていたはずではないか。

 しかも、開いた口がふさがらないのは25日に東京都庁で行われた小池都知事との会談後、IOCのジョン・コーツ委員長がマラソンと競歩の札幌への開催地変更で生じる追加経費の財源として再び東京都民の税金が充当される可能性も示唆したこと。小池都知事は負担しないと言い切っているが、ここまでタダでさえ巨額の費用をつぎ込みながら事実上のパーにしようとしている上にまたしても血税が充当されるような事態となれば、都民からの猛反発は必至だろう。

 ちなみに東京に五輪を招致する段階で政財界のお偉方たちが世界に「コンパクト五輪」などと訴えて息まいていたが、実際に開催が決まって時間が経ってみると、それがいかに矛盾だらけだったかが分かる。マラソンと競歩以外にも複数の競技が東京都外で開催されるとあっては「どこが東京五輪なのか」「これじゃあ日本五輪だ」などと突っ込みが入っても招致アピールで〝ウソ〟をついた前出のお偉方は弁明などできまい。

関連記事

新着記事

»もっと見る