2024年12月23日(月)

WEDGE REPORT

2019年10月7日

(AP/AFLO)

 女王の完全復活だ。テニスの中国オープン・女子シングルス決勝(6日・北京)で世界ランキング4位の大坂なおみが現世界1位のアシュリー・バーティ(オーストラリア)を下し、大会初優勝。9月の東レ・パンパシフィック(大阪)に続き、日本女子としては史上初となる出場2大会連続優勝の快挙を成し遂げた。

 9月に自らと入れ替わって世界1位となったバーディーと新旧女王対決になり、第1セットこそ奪われたものの第2、最終セットを制して逆転勝利に結び付けた。これで7日発表の世界ランキングでは3位へ浮上することにもなった。

 前夜の準々決勝では世界6位のビアンカ・アンドレースク(カナダ)とも対戦。2018年の全米オープン・女子シングルスを制している大坂は、今年の全米オープンですい星のように現れて一気に頂点へとかけ上がった19歳のアンドレースクを相手に2時間14分もの激戦を繰り広げると、最後まで集中力を切らさず逆転で白星をもぎ取っている。

 この準々決勝では全米女王対決としても注目された中、ツアー17連勝中と勢いに乗るアンドレースクに土をつけた。そして決勝でも世界1位のバーディーに前夜の激闘の疲労から思うように体が動かずに苦しめられながらも我慢のプレーから相手のミスを引き出し、ストローク戦の展開で最後は逆転勝ち。強敵たちを相手に抜群の運動能力を発揮した上、特に準々決勝以降はセットダウンでもいら立ちを見せることなく終始冷静さを貫いていたのが印象的だった。

 上位選手を相手にクレバーな試合運びと落ち着きを保ち、今大会を制した意味合いはとてつもなく大きい。自身の好調ぶりを満天下に誇示するバロメーターとなったのも間違いないだろう。そして、年間成績上位8人で争われるWTAファイナル(10月27日開幕・深セン=中国)に進出することも併せて決まった。

 今年は天国から奈落へと突き落とされかけていた。2018年の全米オープン、そして今年1月の全豪オープンも連続制覇し、グランドスラム2大会連続優勝。世界1位となって国民的なヒロインに躍り出たが、今年2月にコーチを務めていたサーシャ・バイン氏との契約を解消したあたりから結果が急に伴わなくなり、ゴタゴタも続くようになった。

 バイン氏とのコーチ関係解消の裏側に金銭トラブルがあったとする疑惑が持ち上がったり、さらに10代前半の頃にコーチを務めていた人物から「賞金と契約金から約20%を受け取る契約を結んだ」と主張され、約200万ドルの賠償金支払いを求める訴えを起こされたりするなど踏んだり蹴ったりの状況にさいなまれた。

 この直後、大坂は「誰も私に味方してくれない」と周囲に漏らし、人間不信にまでなりかけていたという。復調への大きなターニングポイントとなったのは9月に後任コーチのジャーメーン・ジェンキンス氏と契約を解消し、シーズン終了後に新コーチの人選に入るまで父のレオナルド・フランソワさんが代役でコーチを務めるようになってからだ。

 父がコーチ代理となってからは破竹の快進撃が続くようになり、中国オープンを制覇した現在まで10連勝中。幼少期にテニス経験のない父の教えのもと、二人三脚で頑張って練習を続けてきたことが今の大坂なおみを作り上げたのは広く知られた話だ。大坂自身が「原点に戻った感じがしている」と率直に評する父とのコンビは、それまで不安定だったメンタル面の不安を大きく解消する形につながっているのは言うまでもない。


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