謎の将軍がデモ弾圧を指南
イランへの非難が高まるにつれ、若者たちのデモも暴力的になった。11月3日には、シーア派の聖地、中部カルバラにあるイラン総領事館にデモ隊が殺到。建物に火炎瓶を投げ、イランの国旗を引きずり下ろした。南部でも、イラン支援の民兵組織「アサイブ・アルハク」の本部が襲われ、救急車で運ばれようとした幹部が殺害された。
バグダッドのデモでは、イランの最高指導者ハメネイ師やイラクの政治を背後で操っているといわれるカセム・ソレイマニ将軍の顔写真に赤いバッテンが付けられて掲げられた。同将軍はイラン革命防衛隊のエリート部隊コッズの司令官。海外戦略を担い、その神出鬼没の行動で謎の将軍として知られる人物だ。
イラクからの報道などによると、アブドルマハディ首相は抗議運動の激化で、一時辞任する腹を固めたが、急きょバグダッド入りした将軍が「デモは米国とイスラエルによる陰謀」などとして、首相に辞任しないよう圧力を掛けて撤回させたという。将軍はイランが民主化運動を鎮圧した事例を引き合いに出し、強硬策で当たるようイラク側に要求した。
将軍のバグダッド入り後、イラク政府はデモ隊との対話路線を転換。治安部隊や民兵組織のスナイパーが屋上からデモ隊指導者を射殺したり、デモ隊の負傷者を手当てしようとしていた医師団を誘拐するなどした。最近では、デモ隊にスパイを送り込んで参加者の写真を撮影、携帯に写真を送って脅すなど切り崩しを図っている。