2022年12月9日(金)

WEDGE REPORT

2019年11月23日

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樫山幸夫 (かしやま・ゆきお)

元産經新聞論説委員長

元産經新聞論説委員長。政治部で中曽根首相番、竹下幹事長番、霞クラブ(外務省)詰め、ワシントン特派員、同支局長、外信部次長、編集局次長、正論調査室長兼論説委員、産経新聞社監査役を歴任。2度のワシントン勤務時代は、ホワイトハウス、国務省などを担当、米国の内政、外交など幅広く取材した。

横田めぐみさん拉致の日に採択

 今回、総会第3委員会で決議が採択された11月14日は日本時間11月15日。42年前の1977(昭和52)年、当時13歳、中学生だった横田めぐみさんが、新潟市内で北朝鮮に拉致された、まさにその日だ。忘れることのできない痛恨の日に採択された決議、その共同提出を日本政府は見送った。

 めぐみさんの両親、滋さん(87)と早紀江さん(83)夫妻から、あの日のことを聞いたことがある。

 つるべ落としの冷秋の夕、いつまでも帰宅しない娘を必死で探し回ったこと、何が起きたのかわからないなかで、得体のしれない不安と恐怖が広がっていくー。早紀江さんの冷静な語り口に耳を傾けていて、月並みな表現ながら、背筋を冷たいものが走るのを感じた。

 早紀江さんは、再びめぐってきた11月15日を前に、「42年もたって解決しないことが嘆かわしい」と焦る心境を吐露。16日に新潟市で開かれた「忘れるな拉致 県民集会」に寄せたビデオメッセージでは「政府は本気で動いていただきたい」と訴え、暗に無益な譲歩などしないようクギをさした。

「本気で動いていただきたい」ー。今回非難決議共同提出を見送った安倍首相ら政治家、政府高官は、早紀江さんの悲痛な叫びをどう聞いたろう。

首相、昨年から日朝会談に意欲

 日本政府にしてみれば、準備段階で多少の配慮、譲歩はしても、日朝首脳会談にこぎつけ、拉致被害者の帰国に結び付けようということだろう。しかし、成算はあるのか。

 日朝首脳会談に向けた動きは陰に陽に、2018年の早い時期から内外で続いた。

 金正恩委員長と韓国の文在寅大統領による初の会談が行われた直後の2018年4月29日、文大統領は安倍首相に電話で、金委員長が日本といつでも対話するとの意向を表明したーと伝えた。

 安倍首相は同年6月中旬、拉致被害者の家族らとの面会で、日朝首脳会談について「拉致問題は主体的に責任を持って解決していかなければならない」と述べ、北朝鮮との直接対話による解決に意欲を見せた。首脳会談については「拉致問題が前進していくものにならなければ意味がない」との前提条件を付けた。

 この時期は、トランプ米大統領と金正恩委員長による初の米朝首脳会談が行われる直後であり、首相にしてみれば、米朝関係の改善という好機に乗じて、拉致問題の進展をはかりたいとの思惑だったろう。

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