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2019年10月29日

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樫山幸夫 (かしやま・ゆきお)

元産經新聞論説委員長

元産經新聞論説委員長。政治部で中曽根首相番、竹下幹事長番、霞クラブ(外務省)詰め、ワシントン特派員、同支局長、外信部次長、編集局次長、正論調査室長兼論説委員、産経新聞社監査役を歴任。2度のワシントン勤務時代は、ホワイトハウス、国務省などを担当、米国の内政、外交など幅広く取材した。

 天皇陛下が即位を宣明される「即位礼正殿の儀」は先週、滞りなく終了した。華やかな〝祝賀外交〟も展開された。

〝サプライズ〟は、なんといっても米国の参列特使だった。各国の国王、元首クラスが顔をそろえる中、米国は、大統領でも副大統領でもなく、運輸長官を派遣したにとどめた。 「世界で最も重要な2国間関係」の相手の、国をあげての慶事に対してだ。

 〝冷戦終結30年〟という節目の年にあって、重みを増している日米の同盟関係が盤石かといえば、必ずしもそうとはいえまい。これまでの両国関係を顧みれば、脆弱さを暗示する大小の問題が、起きては消え、消えては起こるーいわば摩擦の繰り返しだった。今回の即位の礼代表団問題は、その典型的な例だろう。

 この機会に、両国の間に見えない形で横たわる根源的な相違を再認識し、日米関係の在り方を内省するのも悪くない試みだろう。

(bee32/gettyimages)

当初はペンス副大統領派遣を検討

 米国代表、イレーン・チャオ運輸長官は、大統領職継承順位13位、日本でいえば〝ヒラ大臣〟だ。

 お祝いに駆けつけてくれた海外の特使について、あれこれいうのは非礼極まりないことは承知のうえだが、前回、上皇さまの即位の礼の際は、当時のクエール副大統領が参列した。

 今回も当初、ペンス副大統領が出席する方向で検討されていたが、ウクライナ疑惑への同氏の関与も指摘されるなど政治情勢が考慮され見送られた。

 米国以外の主要国からの顔ぶれを見ると、チャールズ英皇太子、アレクサンダー・オランダ国王夫妻、フィリップ・ベルギー国王夫妻、アウン・サン・スー・チー・ミャンマー国家顧問兼外相、サルコジ前フランス大統領ら絢爛たる顔ぶれ。関係が改善しつつある中国は王岐山・国家副主席、いわゆる徴用工問題で関係が極度に悪化している韓国も李洛淵首相を派遣した。

 これらに比べると、米国代表団の存在は率直に言って〝見劣り〟の印象を否定できない。

 儀式への参列者が誰だったとか、いわば感情論で日米の同盟関係を論じる愚を犯すつもりはないが、些細に見えるものの、実はそれが、文化、習慣、互いに相手を敬うという基本的な価値観にかかわる深刻な問題であったということは、過去、現在少なからず見られる。

いまさらながらの「安保ただ乗り論」

 いくつか具体的な例をあげよう。

 ことし6月、米ブルームバーグ通信の記事に驚いた人も多かったろう。

 トランプ大統領が側近らに対して、日米安保条約に関して、日本が支援された場合だけ米国が助けることを「一方的で米国に不公平だ」と強い不満を漏らした。条約の破棄にまで言及したという。同じ時期、大統領はホルムズ海峡での船舶航行に関して、日本、中国などを名指し、「米国はなぜ無報酬で航路を守っているのか。自身で防衛すべきだ」と厳しく注文をつけた。

 1980、90年代に米国内でやかましかった「安保ただ乗り論」そのままであり、日本が多額の経費負担をしている今ごろになって蒸し返されるとは驚きだった。

 日本政府は安保廃棄について、「ホワイトハウスかららは、条約の見直しは考えていないという話だった」(当時の河野外相)と否定、ホルムズ海峡の防衛については「中東の緊張緩和と安定に向けて努力を続ける」(菅官房長官)と述べるにとどまったが、当惑は隠せなかった。

 トランプ氏は2016年の大統領選の期間中も、防衛費問題や貿易不均衡で日本非難を展開した。安保破棄やホルムズ海峡に関する発言もこうした持論を持ち出しただけなのだろう。

 北朝鮮の短距離弾道ミサイル発射実験についても、トランプ大統領は容認姿勢に転じ、脅威に直接さらされる日本を一顧だにしない姿勢を見せている。ことし10月2日、北朝鮮が海上構造物からミサイルを発射した際も、安倍首相が強く非難したのを知ってか知らずか、「様子を見てみよう」とやはり寛容な発言ぶりだった。

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