2022年12月9日(金)

WEDGE REPORT

2019年11月23日

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樫山幸夫 (かしやま・ゆきお)

元産經新聞論説委員長

元産經新聞論説委員長。政治部で中曽根首相番、竹下幹事長番、霞クラブ(外務省)詰め、ワシントン特派員、同支局長、外信部次長、編集局次長、正論調査室長兼論説委員、産経新聞社監査役を歴任。2度のワシントン勤務時代は、ホワイトハウス、国務省などを担当、米国の内政、外交など幅広く取材した。

一時は期待高まる 

 今年2月のハノイでの第2回米朝首脳会談の席で、金正恩が、拉致問題が懸案になっていることを認め、首相と会う用意があると前向きな姿勢を見せたとも伝えられた。

 こうしたなか2018年7月と同10月にそれぞれ、ベトナムとモンゴルで安倍首相に近い北村滋内閣情報官(当時、現国家安全保障局長)が北朝鮮高官と接触したと伝えられ、首脳会談への展望がひられるのではないかとの期待が高まった。

 首相は今年5月、「私自身が金正恩委員長と向き合わなければならない。条件を付けずにということだ」(5月6日、トランプ米大統領との電話協議後のインタビュー)と述べ、従来の「拉致進展」から、「前提条件なしの会談実現」に方針を転換した。

 首相はさらに宥和的な姿勢を強め、2019年7月から連続、集中的に強行された北朝鮮のミサイル発射についても、従来の強硬姿勢を大幅にトーンダウンさせた。 

 8月16日、北朝鮮がミサイル2発を発射したが、安倍首相は「わが国の安全保障に影響はない。引き続き十分な警戒体制のもと国民の安全を守る」と述べ、安全保障会議も開かず、さっさと別荘に出かけてしまった。それまで、「わが国に対する重大な脅威であり、国連安全保障理事会決議に違反している」(2017年5月14日のミサイル発射時)など強い姿勢を見せていたのとは驚くほどの違いだ。

 首相のこの〝変心〟はどういうことか。トランプ米大統領が短距離ミサイルは容認する姿勢を示していることに呼応したのかもしれないが、やはり日朝首脳会談実現を目指して先方に〝秋波〟を送ったとみるべきだろう。

非難合戦が復活

 今回の国連総会での人権非難共同提出見送り、春の人権委員会での同様の対応も、その延長戦にあるのは明らかだが、 北朝鮮はどうこたえたのだろう。

 8月15日、終戦の日という機会に出された祖国平和統一委員会の報道官談話。韓国の文在寅大統領を激しく非難したものの、日本への言及は一切なかった。北朝鮮側が日本の呼びかけに応えるサインとの見方をできないことはなかった。

 北朝鮮はその後、再び日本非難をはじめる。

 8月19日、宮崎県警が拉致の可能性のあった70代の男性が国内で見つかったと発表したことを受けて、「(拉致は)根拠のない捏造」と攻撃。9月に公表された防衛白書についても、政府機関紙「民族朝鮮」は「軍事力強化を正当化している」と非難を加えた。

 一方、安部首相も北朝鮮非難を再開。10月31日に短距離弾道ミサイルとみられる飛翔体がわが国のEEZ(排他的経済水域)の外側に落下した際、「平和と安全を脅かすもの」と強く非難、従来の強硬姿勢に戻ったようだった。

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