「取引上の地位が優越している」場合とは
どのような場合が、「取引上の地位が優越している」といえるのでしょうか。
「考え方」によると、あるプラットフォーマーが提供しているサービスに代わるようなサービスがなかったり、他のサービスに乗り換えた場合の不利益が大きかったりすることで、そのサービスの利用を止めることが難しい場合や、そのサービスの競争力が大きすぎるなどの理由でユーザとしては利用条件が不利であっても受け入れざるを得ないような場合が「取引上の地位が優越している」場合にあたるとされています。
例えば、スマートフォン向けのアプリストアの場合、ユーザはiOSやAndroidなど、自分のスマートフォンのOS向けのアプリをダウンロードして使用することになります。そのOSで使用できるアプリストアが一つしかない場合、サービスに不満を感じたとしてもおいそれと別のアプリストアに変更することはできません。
また、SNSであっても、既に多数のフォロワーがいたり、友人同士やビジネスなどの日々の連絡に使用しているような場合には、やはり、他のSNSに乗り換えづらいでしょう。
このようなサービスを運営する企業は消費者に対して「取引上の地位が優越している」関係にあるといえると思われます。
「不当に個人情報を取得・利用する」場合とは
また、公正取引委員会の「考え方」では、不当に個人情報を取得・利用する場合として、優越的な地位を背景にして、次のような場合が想定されているとされています。
- 利用目的を知らせないで個人情報を取得すること
- 利用目的に必要な範囲を超えて個人情報を取得・利用すること
- 情報管理体制が不十分なまま個人情報を取得・利用すること
- 本来提供していた個人情報に追加して個人情報の提供を求めること
例えば、アプリストアを運営するプラットフォーマーが、消費者が他のサービスに乗り換えることが困難なのを盾にして、アプリの販売に無関係な、職業、性別、年齢、趣味・嗜好などの個人情報を提供するよう求めたり、サービスに全く無関係な第三者に個人情報を提供することを認めさせるような場合には、独占禁止法に違反する可能性があります。
ただし、公正取引委員会の「考え方」は、プラットフォーマーによる個人情報活用の有用性も認めていますので、たとえ利用目的を超えた個人情報の取得・利用があっても、ユーザに個人情報を提供するかどうかの選択肢が与えられているような場合には、独占禁止法違反の問題にはならないと考えられます。
実際の運用を待つ必要はありますが、個人的には、プラットフォーマーによる個人情報の取得・利用が独占禁止法違反であるとみなされる場合は、かなり限定されるのではないかと推測しています。