2024年7月16日(火)

Washington Files

2020年1月6日

左傾化は今後も不変か?

 第一部でこのように指摘した上で、第二部では、こうした傾向が今後も続く理由として、次の諸点を挙げている:

 「寛大な社会的恩恵、個人の自由の拡大、“社会保障国家”としての諸制度の整備、法制化が定着すると、それらがもたらす副作用も目立たなくなり、市民も慣れっこになってしまうため、政策変更はより困難になっていく」

 「移民増が地域住民の反発を招き、世論を右傾化させる時期があったとしても、一時的現象に過ぎず、やがては多様性社会として安定へと向かっていく。その好例がカリフォルニア州だ。同州は移民が急増し始めた1960年代から2000年代初めにかけて、失業増大、物価高騰、製造業の衰退などもあいまって人種的不穏、経済的漂流のただ中にあった。国家レベルで民主、共和両党支持者間の分裂がみられる今日さながらの状況だった。しかし、その後さらに移民流入が続き多様性社会の成熟とともにIT革命に触発された州経済の活性化が進む一方、弱者救済の社会プログラムが次々と打ち出された。そして州議会では今日、上下両院で民主党議員が75%近くを占める進歩的“民主党王国”となっている」

 「だが、今日、全国の政治状況を見ると、共和党は上院で多数を占め、保守的閑村州の圧倒的支持を得て進歩主義的諸政策に徹底して反対するする戦略を進めている。それでも、今後もし、伝統的共和党グループがトランプ派と、たもとを分かつことになったり、現在の20歳代の若者世代が圧倒的に民主党を支持しているように、新たな世代が有権者の大半を占める時代が到来した場合、全国レベルでもカリフォルニア州並みの進歩的政策が目立ち始める可能性が十分にある」

 もちろん、アメリカの左傾化は今後も不変とするこうした見方には異論がある。

 その最たるものが、「共和党綱領」だ。前回中間選挙に向けて採択された同党2016年度版綱領では、①国内面では、移民増や社会保障のマイナス面が顕在化し、社会不安と家庭崩壊の懸念が高まりつつある②対外面では、ロシアの復活、中国の台頭により、アメリカの地位と栄光にかげりが見え始めている―などを論拠に「国民は伝統的価値の回復と軍事力の増強を求めている」として、民主党の従来の政策を批判し、これと対立する展望を描いている。

 しかし共和党の指摘は、同党の伝統的保守地盤の声を代弁したものであり、加速するグローバリズの中で変貌を遂げつつある今日のアメリカを必ずしも反映したものではない。

 逆に、アメリカが明確な進歩主義的傾向を強めているとする論調は、前掲のワシントンポスト紙報道のみならず、他の多くの米国メディアでも見られる。


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