Washington Files

2020年1月6日

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斎藤 彰 (さいとう・あきら)

ジャーナリスト、元読売新聞アメリカ総局長

1966年早稲田大学卒業。68年米カリフォルニア州立大学バークレー校大学院修士課程修了、70年読売新聞入社。ワシントン常駐特派員を2度務めた後、アメリカ総局長、東京本社取締役調査研究本部長などを歴任。近著に『中国VSアメリカ』『アメリカはカムバックする!』(いずれもウェッジ)がある。

(iStock.com/flySnow/Purestock)

 戦後、自由主義経済を謳歌してきたアメリカが、じわじわと左傾化しつつある。トランプ政権下で加速したとの見方もある。右寄り体質を鮮明にしてきた共和党は果たして、11月の大統領選と議会選挙で有権者の心をつなぎとめることができるのかーー。

 「民主党は左傾化してきた。しかしアメリカ全体も同様に」

 米ワシントン・ポスト紙は昨年11月28日付で、こんな見出しで始まる特集記事を掲載した。カリフォルニア大学サンディエゴ校社会学部のレイン・ケンワージー教授が第一部、第二部に分けて論じたもので、具体的データを挙げ、アメリカが過去数十年の間に着実に左傾化してきたことを立証、さらにこうした傾向が今後も続く理由についても説明している。

(mj0007/gettyimages)

 記事の概要は以下のようなものだ:

 「民主党は今世紀最初の10年は、他の豊かな先進諸国同様、中道右派の路線を踏襲してきたが、2012年以降、左傾化し、2020年大統領選の同党候補者たちはバイデン氏含め、前回大統領選時よりさらに左寄りにシフトしつつある。しかし、これは民主党に限ったことではない。過去数十年の間に、文化的、社会的諸問題に関し国全体が左傾化してきた」

 「多くの識者は、アメリカが進歩派と保守派間で絶えざる“文化戦争”を繰り返してきたとしているが、これは的を射たものではない。実際は過去半世紀の間に人種,男女の役割、家庭、性識別、麻薬などの諸問題において国全体が、個人の自由の拡大を志向してきた。一部の南部保守主義州で中絶禁止措置が強化されてきたにもかかわらず、ピル使用による中絶が2000年時の1%から2017年には全米で39%にも達している事実は、その一つの現れだ」

 「先進国では暮らしが豊かになればなるほど、社会保障プログラムが拡大する傾向にある。アメリカも同様であり、1世帯当たり受け取る平均社会保障給付額は1975年当時の1万1500ドルから2017年には1万7000ドルに増加した。メディケアおよびメディケイド給付額も1980年当時から倍増になった。社会保障のモデル国とされるデンマーク、スウェーデンとのギャップも、1世紀前と比べると今日、顕著に縮小しつつある。その先端を行くのがカリフォルニア、ニューヨーク、マサチューセッツ、オレゴンなどの諸州であり、これらの州ではカレッジ授業料免除、低所得者対象の低額公営自動車保険、全4歳児教育の3歳児への拡充といったプログラムが実施されている」

 「米国民の大半は、非効率で無駄の多い『ビッグガバメント』について意見を聞かれると否定的だが、ひとたび新たな社会プログラムが導入されると、圧倒的多数が支持に回る。これは民主党員のみならず、共和党も同じであり、トランプ氏が2016大統領選予備選で共和党指名獲得に成功したのも、選挙期間中に『自分は社会保障年金やメディケアには一切手を付けない』とツイッターに書き込んだ公約に負うところが大きい」

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