Washington Files

2020年1月20日

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斎藤 彰 (さいとう・あきら)

ジャーナリスト、元読売新聞アメリカ総局長

1966年早稲田大学卒業。68年米カリフォルニア州立大学バークレー校大学院修士課程修了、70年読売新聞入社。ワシントン常駐特派員を2度務めた後、アメリカ総局長、東京本社取締役調査研究本部長などを歴任。近著に『中国VSアメリカ』『アメリカはカムバックする!』(いずれもウェッジ)がある。

「2期8年の任期中に国の借金をゼロにする」と大見得を切った

 これに対し、トランプ政権では、国内ではオバマ前政権から続いてきた経済成長が順調に推移、対外面では、北朝鮮の核問題、緊迫化する米イラン関係などの不安定要因があるものの、喫緊の国家的大問題を抱えているわけではない。

 それでも、トランプ氏は2016年大統領選で有権者向けに「2期8年の任期中に国の借金をゼロにする」と大見得を切って見せたにもかかわらず、財政赤字はゼロどころか前政権以上に増え続けているのが現状だ。

 米財務省データによると、トランプ大統領就任後、最初の2018会計年度の財政赤字は前年度比17%増の7790億ドルとなった。

 要因としては①法人税減税による30.9%の収入減②国防費5.6%増③社会保障費4.5%増、などが指摘された。

 さらに2019会計年度では、前年度比26%増の9840億ドルの赤字を記録、過去7年間で最大となった。最大要因として国防費増、メディケア支出増が挙げられた。

 そして前述したとおり、2020年会計度末の赤字は1兆ドル突破が確実となっている。

 アメリカの累積赤字は、2020年会計年度予算教書が発表された昨年3月段階で世界最大規模の約22兆ドル(約2200兆円)に達しており、今後数年間も財政赤字は毎年1兆ドル超えが予想されているため、これまで以上にさらに拡大していくことになる。

 ちなみに日本の累積赤字は、約1000兆円だ。約3・5倍の人口比から見ればまだ、アメリカは“社会福祉国”からは程遠い。

 もともとアメリカでは建国以来、DIY(Do It Yourself)に象徴される「自助努力」がよしとされ、政府援助や社会サービスに依存する「ビッグ・ガバメント」(大きな政府)はどちらかと言えば敬遠されてきた。

 しかし、政治の世界では、社会の不平等や落ちこぼれ問題が顕著になるにつれ、弱者救済に力点を置く民主党が政府規模の拡大を主張し始める一方、共和党はあくまで競争原理を重視する「スモール・ガバメント」の立場を標榜、両党間で政策論争を繰り広げてきた。この結果、「ビッグ・ガバメント=民主党」vs「スモール・ガバメント=共和党」という対立構図ができ上がり、今日に至っている。

 ところが、内実をつぶさに見ると、上記のような両党の色分けは必ずしも実態を反映したものではない。

共和党も民主党に劣らず「ビッグ・ガバメント」志向

 ジョージ・メイソン大学のベロニク・デルージ上級研究員は、連邦政府行政管理予算局(OMB)が毎年公表してきた「国民一人当たりの政府支出」統計に着目、歴代政権下での推移を追跡してきた。

 それによると、終戦後の1948年1年間に一人当たり約2000ドルだった政府支出はその後、一貫して増え続け、2013年には5倍の1万ドルを突破、その後も今日に至るまで拡大の一途をたどっている。

 しかも興味深いのは、共和党のレーガン、ジョージ・W・ブッシュ共和党政権当時のほうが、民主党のカーター、クリントン政権の時より一人当たりの支出額が上回っていた点だ。すなわち、党の表看板とは裏腹に、共和党が実際には民主党に劣らず「ビッグ・ガバメント」志向であることを示しているという。

 共和党はトランプ政権下でも、オバマ民主党政権時よりさらに財政赤字拡大が明確になったことで、いよいよ同党の「小さな政府」は看板倒れの印象をぬぐいきれなくなった。

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