Washington Files

2020年1月20日

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斎藤 彰 (さいとう・あきら)

ジャーナリスト、元読売新聞アメリカ総局長

1966年早稲田大学卒業。68年米カリフォルニア州立大学バークレー校大学院修士課程修了、70年読売新聞入社。ワシントン常駐特派員を2度務めた後、アメリカ総局長、東京本社取締役調査研究本部長などを歴任。近著に『中国VSアメリカ』『アメリカはカムバックする!』(いずれもウェッジ)がある。

共和党を支持する州の政府依存度が高い

 実際に、共和党の伝統的支持層が政府依存体質を強めつつあることを示すデータがある。

 金融・ビジネス専門のデジタルメディア「MarketWatch」は昨年6月、全米各州別の「政府依存度ランキング」を発表した。連邦政府が1年間に各州に配分した助成金、1世帯当たりの社会保障プログラム依存率、各州の連邦政府職員数などをもとに試算した。

 それによると、政府依存度トップ・テンのうち、1位=ミシシッピー州、2位=アラスカ州などのように、なんと上位8州が“red states”すなわち共和党支持州で占めているという。共和党強硬派で議会の指導的立場にあるミッチ・マコーネル上院院内総務の出身州ケンタッキー州は第5位だ。

 これに対し、全米50州中、依存度が最も少ない下から10州のうち6州が、2016年大統領選ではヒラリー・クリントン民主党候補支持州だった。

 こうしたことから、「MarketWatch」は「皮肉にも、カリフォルニア、マサチューセッツ、ニュージャージー、カリフォルニアといった民主党支持州が、共和党支持のレッド・ステーツの財政を支援してきた」と結んでいる。

 そこで最近、共和党内部で浮上してきたのが、「大きな政府」を是とする「新保守主義New Conservatism」と呼ばれる考え方だ。

 首都ワシントンに本部を置く保守系シンクタンクとして知られる「ケイトー研究所CatoInstitute」は昨年12月6日、「ビッグ・ガバメント保守主義が復活した」とする論評を発表した。そして、次のように述べている:

 「1980年代のレーガン共和党政権時代はたしかに、スモール・ガバメントが主流だった。しかし今日、同じスローガンを掲げるだけでは、選挙に勝てなくなってきた。21世紀に入りグローバル競争が激化、台頭する中国相手にイノベーションやIT革命を意欲的に推進するとともに、わが国の知的財産権保護などのためには政府の役割拡大を期待せざるを得なくなってきた。われわれは“新保守主義 New Conservatism”すなわち『ビッグ・ガバメント保守主義』の時代に入ってきた……」

 まさにトランプ政権は、この“新保守主義”を体現したものだ。そして今後もアメリカでは、政府保護や様々な形の社会保障サービスを求める有権者の声が高まっていくことは必至であり、将来的には日欧諸国並みの“社会福祉国”へと変質していくことも十分考えられよう。

 トランプ大統領は、就任以前から固執してきた、国民健康保険充実をめざした「オバマケア」改廃については最近、自らのツイッターなどでもほとんど触れなくなった。それどころか今後、11月大統領選での再選に向け、さらなる財政悪化も覚悟の上で大規模インフラ投資といった「ビッグ・ガバメント」政策を打ち出していく可能性もある。

 「小さな政府」のアメリカは、遠い過去となりつつある。

  
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