ゴーンも香港人2人も
長期拘留される
ゴーン被告が日本の司法制度を非難した理由の中に「長期拘留」があった。日本では逮捕から23日間、身体の拘束が可能で、その期間中に起訴すれば、さらに2カ月の拘留が認められ、その後も拘留期間の延長ができる。もし弁護士が保釈請求をしても「証拠隠滅の恐れ」を理由に却下されることも多く、ゴーン被告の場合も保釈されるまで約2カ月間拘留された。
実は香港人も長期間に渡って日本で拘留され、今も裁判が続いている案件がある。18年12月12日、郭紹傑被告と厳敏華被告は靖国神社の参道で日本の戦争責任について抗議し、建造物侵入罪で起訴された。東京地裁は19年10月10日に両人に有罪判決を下し、2人は即日控訴している。前者は雨傘運動では抗議活動に従事し、後者は香港の民間ラジオ局の記者だ(日本人には分かりにくいかもしれないが、雨傘運動で民主化を求める人が、戦争に絡む靖国神社に関しては抗議をするという動きは香港人の中では成り立つ)
彼らは10月の判決を迎えるまで度重なる保釈請求を求めたにも関わらず、裁判所は「決まった住所のない外国人で、証拠を隠す恐れがある」などの理由で、いずれも保釈を認めないまま判決に至った。
判決の是非ではなく、外国人であるゴーン被告、郭紹傑被告、厳敏華被告は長期拘留されたという事実。こんなところにもゴーンと香港の共通点があった。
日産の高級ブランド「インフィニティ」は
横浜と香港を往復する形に
日産の高級ブランドに「インフィニティ」があるが、実は12年から中国市場を意識して本社機能を香港に移していた。筆者も現地を訪れ、会議の様子を見たことがあるのだが、アジア、欧米、東南アジアなど、さまざまな出身国の人々が集まり、まさにグローバルを象徴するようなメンバーだった。
しかし、インフィニティブランドの電動化を念頭に効率性を更に追求し、日産自動車との連携をより強化するために20年半ばに本社を横浜に戻す事を決定した。
関係者によれば、ゴーン被告は大体年に1回のペースで香港を訪れていたそうだが、結局はゴーン被告の逮捕が横浜に戻る遠因になったことは間違いないだろう。香港政府は、世界的企業のアジアの地域統括本部が香港に数多くあると宣伝する事が多い。そう言う意味でゴーン被告に結果的に振り回されてしまった。
香港は東京以上にコスモポリタンな街で、世界経済と密接につながっている。日本も今まで以上にグローバル化が進めば、今回の日本を介した「ゴーンと香港」のように、日本と世界が複雑に絡み合っている事例をより感じる機会が増えていくだろう。
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