2024年11月22日(金)

世界の記述

2020年1月27日

日産本社(筆者撮影)

 カルロス・ゴーン被告のレバノンへの逃亡は2019年最後の大きなニュースとなったが、レバノンと日本の間に身柄の引き渡し条約がないことが、ニュースを大きくした主要因と言える。このニュースを聞いて筆者がすぐに思い浮かんだのは、香港で19年から続く大規模デモの発端となった逃亡犯条例改正案だ。これを含め、ゴーン被告と香港では3つの共通点があった。

「香港のデモ隊支持」と
「レバノンへの身柄の引き渡し要求」は矛盾する

 香港のデモに関して言えば、日本人の多くは、香港が中国と逃亡犯条例を結ぶ必要はないと考えるのではないかと思う。中国に身柄を引き渡されたら、身の安全がどうなるのか分からないからだ。条例の改正案は最終的に撤回されたが、この恐怖が香港人を立ち上がらせる一番の要因となった。

 一方、ゴーン被告の国外逃亡に関して言えば、「日本政府はレバノン政府と身柄の引き渡し条約を結ぶべき」とか「交渉を開始してはどうか?」という思いが頭をよぎる人が多いのではないか。ゴーン被告が指摘するように「日本の司法制度を改善する必要はあると思う」だろうが、日本人として単純に裁判を受けずに国外に逃亡されたら面白くないと感じるのが自然だからだ。

 つまり、第3者の案件だったものが、自国の件になった途端に、その捉え方に矛盾が生じてしまうのだ。香港のデモ隊を支持するのであれば、日本がレバノンと身柄の引き渡し条約を結ぶのを支持するのは変であり、香港政府や中国政府を支持するのであれば、レバノンとの引き渡し条約推進を支持をするのが道理だ。「中国は例外」というような国・地域の違いや、イデオロギーの違いで矛盾を正当化する理由にはならない。日本人1人ひとりが身柄の引き渡しとはどういうものなのか考えることが必要だ。


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