2024年7月27日(土)

Washington Files

2020年2月10日

「史上最も腐敗した大統領」の具体的中身

 前述のニューヨーク・タイムズ紙社説は、「史上最も腐敗した大統領」の具体的中身にまでは触れなかったが、これまでの米主要各紙の報道などを通じ、以下のような疑惑が指摘されてきた:

①脱税行為

 歴代大統領が行ってきた毎年の確定申告内容の公表を拒否し続ける一方、「Chicago Unit Acquisition LLC」という名の会社に5000万ドル(約55億円)のローンがあるとしてきたが、この会社はトランプ氏本人が100%所有していたことが判明。ニューヨーク州税務当局はこのローンを理由に脱税してきた疑いがあるとして税務関連書類の提出を求めてきたが、提出を拒否し続けている。

②公職法違反

 ニューヨークに本社を置く不動産取引会社「トランプ・オーガニゼーション」のCEO(最高経営責任者)を務めてきたが、大統領就任後も、執行権を長男に移譲する一方、オーナーとしてかかわり続けている。ホワイトハウス入りしてからは、ロシア、中東諸国、アフリカ諸国などの首脳一行が会見求めワシントン滞在の際、同社が保有する「トランプ・インターナショナル・ホテル」を利用する場合が多く、ホテル収益の向上に寄与してきた。フロリダに自ら所有するゴルフ保養地にも大統領として公費で頻繁に投宿してきただけでなく、諸外国首脳との首脳会談開催場所としても利用。

③セックス・スキャンダルともみ消し

 大統領就任前までのセクハラ、強制わいせつなど女性たちからの訴えが今なお続いており、一部報道によると、1970年代以降の事案に関連し、最低25人が大統領相手に係争中。自らはこれらの訴えに対し「事実無根」を主張する一方、数人の元ポルノ女優に対し、十数万ドルの「口止め料」支払いが発覚しており、もみ消し資金の出所をめぐる刑事訴訟事件にも発展している。

④政権私物化

 長女イバンカ、娘婿ジャレッド・クシュナー両氏をそれぞれ「大統領顧問=Advisor to the President」、「大統領上級顧問=Senior Advisor to the President」に登用、ホワイトハウス機密情報アクセスを制限するためのシークレットサービスによる厳密な「セキュリティ・クリアランス」を経ることなく、国家安全保障会議(NSC)への参加なども許可。ワシントン・ポストなどの有力紙は、二人がそれぞれ個人で事業も展開しており、置かれた地位と知りえた情報を私物化する懸念を指摘している。

 そしてこれらの疑惑に加え今回全米の耳目を集めたのが、ウクライナ疑惑をめぐる弾劾裁判だった。上院での最終評決に先立つ下院本会議では「大統領権限濫用」「議会妨害」の「二つの深刻な犯罪行為」が弾劾の対象とされた。裁判の結果について、米マスコミの大半は「無罪とはいえ、大統領の一連の行為は断じて正当化されたわけではない」(ワシントン・ポスト紙)、「下院は引き続きウクライナ疑惑を徹底究明すべきだ」(ロサンゼルス・タイムズ紙)、「上下両院は大統領非難決議を採択すべきだ」(シカゴ・トリビューン紙)など、引き続き厳しい論調を掲げている。

 折しも、「トランプ無罪」の評決が出された前日の去る3日には、民主党の大統領候補を選ぶ全米最初の党員集会がアイオワ州で行われ、最年少で最もクリーンなイメージを強みとするブティジェッジ前インディアナ州サウスベンド市長(38)が1位に躍り出、一躍脚光を浴び始めた。

 果たして11月の大統領選本戦では、「史上最年少で清廉潔白な民主党候補」VS「史上最も腐敗した現職大統領」の一騎打ちとなるのかどうか―。(終わり)

  
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