Washington Files

2020年1月27日

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斎藤 彰 (さいとう・あきら)

ジャーナリスト、元読売新聞アメリカ総局長

1966年早稲田大学卒業。68年米カリフォルニア州立大学バークレー校大学院修士課程修了、70年読売新聞入社。ワシントン常駐特派員を2度務めた後、アメリカ総局長、東京本社取締役調査研究本部長などを歴任。近著に『中国VSアメリカ』『アメリカはカムバックする!』(いずれもウェッジ)がある。

(iStock.com/flySnow/Purestock)

 米政治史上3人目となるトランプ大統領に対する弾劾裁判は21日、上院本会議での審理を開始したが、ウクライナをめぐる新たな疑惑と違法行為が報じられる一方、ホワイトハウスと与党共和党が結託した早期幕引きの動きが目立っている。

 米有力雑誌アトランティック最新号(電子版)は22日、与党共和党が取り仕切る今回のトランプ大統領弾劾裁判について、マコーネル上院院内総務が中心役となった、見せかけだけの「ミッチ・マコーネルの“ポチョムキン裁判” Mitch McConnell’s Potemkin Trial 」との見出しを掲げた痛烈な批判記事を掲載した。

(Moussa81/gettyimages)

 “ポチョムキン”のたとえはもともと帝政ロシア時代、悪名高い政治家・軍人だったポチョムキンがエカテリーナ二世皇帝を喜ばせるため、内実とは裏腹の外見だけは見栄えのする村を築き上げたエピソードに由来するもので、それ以来、西側世界でもインチキ性の高い事業や営みを意味する代名詞として広く使われてきた。

 同誌はこの記事で、以下のように論じた:

 「大統領のウクライナ疑惑については国民の大半が当初から公正な裁判を望んできた。CNNの最近の世論調査でも51%が『罷免』を支持している。それにもかかわらず、弾劾裁判を取り仕切るマコーネル共和党上院院内総務はもともと、裁判実施自体に反対を表明、

 その後世論の圧力に抗しきれず、開廷が確定した後は、トランプ氏が議会で一般教書を読み上げる2月4日までには何としても『無罪』評決にこぎつけるべく画策してきた。この間、大統領とは驚くほどの密接な協力関係を築いてきた。下院の弾劾審議ではすでに、トランプ陣営にとって圧倒的に不利な容疑事実が提示されたが、彼は、実のあるまっとうな裁判にした場合、新たに不都合な証拠や証言が飛び出し、結果的に11月のトランプ再選にダメージになることを熟知している……マコーネルは裁判早期幕引きのため進行規則を練り上げたが、これはまさにポチョムキン裁判であり、本当の裁判とは程遠いまやかしだ」

 実際、マコーネル氏は、下院での弾劾審議が本格化する前から、上院での裁判に備え、ホワイトハウス側と密接な打ち合わせを行ってきたことで知られる。本人も裁判の駆け足審理のための術策を練ってきたことを公言して憚らなかった。

 しかし、本来、大統領をめぐる弾劾裁判では、陪審員としての100人の上院議員全員が、検察、弁護側双方の攻防をじっくり傾聴し、必要に応じ書面で質問した上で、最後に有罪か無罪かの判断を下すことになっている。

 ところが、トランプ裁判では、陪審側の長であるマコーネル氏自らが最初から、被告側のトランプ陣営弁護団と実質審理回避策について何度も協議を重ねてきた。裁判の進行規則も、1999年クリントン弾劾裁判の時とは対照的に、野党側との事前打ち合わせ抜きで一方的に決定された。

 これでは初めから、公正な裁判の体をなすはずがない。

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