Washington Files

2020年1月27日

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斎藤 彰 (さいとう・あきら)

ジャーナリスト、元読売新聞アメリカ総局長

1966年早稲田大学卒業。68年米カリフォルニア州立大学バークレー校大学院修士課程修了、70年読売新聞入社。ワシントン常駐特派員を2度務めた後、アメリカ総局長、東京本社取締役調査研究本部長などを歴任。近著に『中国VSアメリカ』『アメリカはカムバックする!』(いずれもウェッジ)がある。

新たな不正行為は審理の対象外

 さらに、昨年末の下院弾劾審議終了後、以下のような新たな疑惑やトランプ政権の不正行為が報じられてきたが、これらも、今回の弾劾裁判では審理の対象外となっている。

 ①政府活動の公正を期す超党派の監視機関「政府説明責任監察局Government Accountability Office」(GAO)は今月16日、議会の承認した対ウクライナ軍事援助(約4億ドル)をホワイトハウスが政治目的のために凍結したことについて「違法行為」との裁定を下した。

 ホワイトハウスが違反したとされた連邦法は「予算差し止め規制法 Impoundment Control Act」(ICA)と呼ばれ、議会で成立した予算を大統領が恣意的に差し止め・凍結することを禁じる目的で1974年に成立した。

 今回のGAO裁定によると、トランプ政権は2019会計年度で計上されていた対ウクライナ軍事援助のうち国防総省からの2億5000万ドル、国務省支出分1億4100万ドルを昨年6月時点で凍結、その事実が表ざたとなり米議会が追求を始めた同年9月に凍結解除したが、この予算凍結に大統領が直接関与したことを明確にしたうえで「凍結は予算執行スケジュールの単なる遅延ではなく、政治的理由であったことは明らかで、議会が承認した予算支出を恣意的に操作する権限は大統領にはない」と断じた。

 ②米下院による弾劾成立後、トランプ政権が2020年大統領選での再選めざし、ジョー・バイデン民主党候補家族の捜査をウクライナ側に積極的に働きかけていたことを裏付ける新たな疑惑が浮上してきた。トランプ大統領個人弁護士ルーディ・ジュリアーニ氏の側近だったレフ・パルナス氏による一連の証言だ。

 パルナス氏は去る1月15日以来、MSNBCテレビ、ニューヨークタイムズ紙などのインタビューを通じ、疑惑の対ウクライナ工作の実態について、以下のような点を証言した:

 「トランプ大統領は初めから、ウクライナ検察側にバイデン候補関連の疑惑捜査を促すための工作活動のすべてを熟知しており、ジュリアーニ氏と大統領の了解なしに自分がウクライナ側に働きかけするはずがない」

 「大統領は『パルナスなる人物について何も知らない』」と言っているが、嘘をついている。大統領とのツーショット写真など証拠はいくらもある」

 「ウクライナ工作には大統領のみならず、ペンス副大統領、バー司法長官、ボルトン大統領補佐官(当時)らが深くかかわっており、ペンス副大統領がトランプ氏に代わり、バイデン捜査を実現させるため昨年9月、ポーランド滞在中のゼリンスキー・ウクライナ大統領に会いに行ったことも自分は知っている」

 「当初はトランプ氏自らがポーランドに会いに行く計画だったが、ゼリンスキー氏が『バイデン捜査』について首脳会談前に明確な意思表示をしなかったため、トランプ氏は怒り出し、ペンス氏に代行させた」

 「大統領以下トランプ政権は、ウクライナ側の捜査目的について『同国政府内の腐敗摘発のため』」と説明してきたが、全くのでたらめであり、最初からバイデン家族捜査が目的だった」

 「トランプ政権は一時凍結した対ウクライナ援助について、実際は軍事援助のみならずあらゆる援助停止をちらつかせることによって、ウクライナ側にバイデン捜査をさせるつもりだった。ジュリアーニ氏は自分にそうしたメッセージをゼリンスキー大統領最側近の一人に伝えるよう指示し、げんに指示通り、あらゆる援助停止もありうるとの厳しいメッセージを自分が先方に伝達した」

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