2024年6月15日(土)

ベストセラーで読むアメリカ

2020年3月2日

ミリオネアの庶民派サンダース

 かなりの資金をかけて手間暇かけて専門家が調べ上げただけあって、一読すると民主党の政治家もトランプと同じじゃないか、と思えてくるほどだ。例えば、庶民の味方を自認するサンダース上院議員も、本書を読むとイメージが一変する。

 サンダースはほとんど定職につくこともなく、40年近く前に39歳でバーモント州バーリントンの市長選に立候補した。金持ちのための地元の再開発プロジェクトに反対し当選したにもかかわらず、市長になったあとの政策は正反対だったと本書は批判する。市長に当選するや、当時シングルマザーだった自分の支持者と交際を始め、新設した特別な役職を与えて給料も支給した。サンダースはその女性と最終的に結婚するや、妻への給料を引き上げた。

 地元での大学の新設プロジェクトなどにも従事させ、自分の身内がプロジェクトで要職につけるようにした。結局、大学の運営は失敗したのにサンダースの妻は大学の要職を辞任する際、20万ドルもの退職金をもらった。さらに、サンダースは選挙の時に反対した不動産の再開発を推進し、政治献金で潤った。日頃から大企業に厳しい姿勢を示し、銃規制も唱えるのに、地元にあるゼネラル・エレクトリックの軍事工場を優遇した。などなど、市長時代の過去の政策などを細かくあげつらう。

 サンダースの身内が設立したペーパーカンパニーの資金の流れも追及する。集めた政治献金で選挙向けのテレビⅭM 枠を買う際、こうした親族会社を経由しており、多額の資金がサンダースの身内に落ちているのではないかと疑惑の目を向ける。サンダース個人の税務申告書なども分析し、庶民の味方ぶっているものの、2016年と2017年にはそれぞれ、所得が100万ドルを超えた事実も示す。

 また、次々と本を書いて出版し荒稼ぎしていると揶揄する。自分自身が金持ちになったから、サンダースの論調にも微妙に変化が出ていると、次のように指摘する。

Critics note that while Sanders once railed against “millionaires and billionaires” in his speeches, he has now seemed to drop references to millionaires as he has joined their ranks. He now goes after just the billionaire class. Still, Sanders tries to obscure the fact that he has become wealthy because of his position as a U.S. senator writing books. In April 2016, Senator Sanders loudly proclaimed, “I remain one of the poorer members of the United States Senate.” However, several months later he and his wife dropped more than half a million dollars in cash to purchase a vacation home.

「評論家たちは気づいている。サンダースはかつて演説のなかで、『ミリオネア(資産100万ドル以上の金持ち)とビリオネア(資産10億ドル以上の金持ち)』を攻撃してきたのに、自分がミリオネアになったために、ミリオネアには今や触れないようにしているようだ。サンダースは現在、ビリオネアだけを糾弾する。一方で、サンダースは上院議員の地位を利用して本を書き自分が金持ちになった事実を隠そうとしている。2016年4月に、サンダース上院議員は声高に主張していた。『わたしは上院のなかで最もお金がない議員の一人だ』と。しかし、その数カ月後に、サンダースは妻と共同で50万ドル以上もする別荘を即金で買った」

 日本円で兆円単位の資産を持つアメリカの大富豪たちや、不動産王であるトランプ大統領のことを考えれば、サンダースを巡って出てくるお金の単位は桁が小さすぎる。それでも、細かな事実を積みあげて客観的に書く本書を読むと、サンダースに対し、お金にどん欲な偽善者というイメージを抱いてしまう。少なくとも、清廉潔白な清貧の改革者というイメージは覆る。


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