ウクライナ企業とバイデン子息の怪しい関係
ジョー・バイデン前副大統領に対しても手厳しい。副大統領の地位を悪用して、息子など自分の親族に便宜を図っていると指摘する。トランプ大統領の弾劾裁判の発端となったウクライナの件についても、バイデンの息子ハンターとウクライナのガス会社ブリスマとの不透明な関係について次のように客観的な事実をつきつける。ちなみに、引用文中に出てくるデボン・アーチャーとは、ハンターの大学時代からの友人である。
(前略)on April 16, 2014, Devon Archer made a private visit to the White House for a meeting with Joe Biden. The day prior, Burisma had deposited more than $112,000 into a Rosemont bank account marked “C/O Devon Archer.” Six days later, on April 22, it was announced that Archer was joining the board of directors of Burisma. In short succession, on May 13, it was announced that Hunter Biden would join the Burisma board, too. Neither one had any background or experience in the energy sector, or in Ukraine for that matter. We now know based on financial records that each man appears to have been paid $83,333.33 per month by Burisma, or a total of $1 million a year.
「2014年4月16日、デボン・アーチャーは非公式にホワイトハウスを訪れジョー・バイデンと面会した。その前日、(ウクライナのガス会社)ブリスマは11万2000ドルを超える資金を、『デボン・アーチャー様方』とされるロズモントの銀行口座に振り込んでいた。面会から6日後の4月22日、アーチャーがブリスマ社の取締役に就任することが発表された。そのあと間もなく、5月13日には、ハンター・バイデンもブリスマ社の取締役に就任することが公表された。2人ともエネルギー産業に関する知識も経験もないし、ウクライナにおけるエネルギー問題に詳しいわけでもなかった。我々に分かっていることは、金融取引の記録によれば、2人はそれぞれ毎月8万3333ドル33セント、つまり年間で計100万ドルを、ブリスマ社から支払われていたようだ、ということである」
もちろん、これだけでは違法なことがあったとは断定できない。しかし、バイデン一家に対する読者の心証が悪くなるのは想像に難くない。トランプ大統領がウクライナ政府に圧力をかけ、バイデンの息子について捜査させようとした気持ちも分かる気がする。バイデン前副大統領は外交通で知られた。特に、中南米の問題には精力的に取り組んだ。本書では、ビジネスの実績のないバイデンの弟がコスタリカで不動産開発プロジェクトに参画したのも、副大統領としての政治的な影響力を利用したものだとの見方を提示している。そのほか、バイデン一家のビジネスは、カザフスタンや中国、ジャマイカ、ロシアにも及ぶという。
左派のエリザベス・ウォーレン上院議員についても、一般市民のために大企業と戦うというイメージとは裏腹に、法律の専門家として大企業から多額の報酬を得てきた過去を暴露する。特に、1990年代に政府側のアドバイザーとして破産法の改正に携わった経歴を問題視する。その後、大企業が破産を盾に労働者らへの賠償金の支払いを免れようとする訴訟で、企業側にアドバイスして顧問料を稼いだと指摘する。
まさに、例を挙げるときりがない。大統領選に向け民主党の候補者選びで火花を散らしている大物政治家たちのイメージを汚すエピソードが満載だ。ネガティブ・キャンペーンを意図した本書がベストセラーとして多くのアメリカ人に読まれているわけだ。大統領選に影響を与えない、と考える方がおかしいかもしれない。
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