Washington Files

2020年4月13日

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斎藤 彰 (さいとう・あきら)

ジャーナリスト、元読売新聞アメリカ総局長

1966年早稲田大学卒業。68年米カリフォルニア州立大学バークレー校大学院修士課程修了、70年読売新聞入社。ワシントン常駐特派員を2度務めた後、アメリカ総局長、東京本社取締役調査研究本部長などを歴任。近著に『中国VSアメリカ』『アメリカはカムバックする!』(いずれもウェッジ)がある。

世界大恐慌以来最悪の結果となりうる

 以下にいくつかの過去の例を振り返ってみる(ギャラップ社調査):

1.フランクリン・D・ルーズベルト(任期1933-1945年)

  平均支持率63%だったが、1941年12月真珠湾攻撃直後の1942年1月に83%に

2.ジョン・F・ケネディ(1961-1963年)

  平均支持率70.1%だったが、キューバミサイル危機直後の1962年3月に83%に 

3.ジミー・カーター(1977-81年)

  平均支持率45.5%だったが、イラン米大使館人質事件で1979年12月に74%に

4.G・W・ブッシュ(2001-2009年)

  平均支持率49.4%だったが、9・11テロ事件直後の2001年9月に81%に

5.バラク・オバマ(2009-2017年)

  平均支持率47.9%だったが、世界同時不況直後の2009年2月に65.5%に

 ところが、今回のコロナウイルス感染拡大の場合、ルーズベルト大統領が真珠湾攻撃をきっかけとして対日戦争に踏み切った時を除き、経済、市民生活、公衆衛生面での未曽有の危機だ。

国際通貨基金(IMF)のゲオルギエバ専務理事も9日、その深刻さについて「世界大恐慌(1929~30年代)以来最悪の結果となりうる」と警告している。

 この間、毎日夕刻にホワイトハウスで行われるコロナ危機に関する定例ブリーフィングにはトランプ大統領が必ず登壇、TVカメラを前に約1時間、日によっては2時間近くも対策についての“独演会”を開いてきた。

 過去の大統領が、国家危機に直面した場合、毎日長時間、記者団相手に直接ブリーフィングに乗り出したケースは皆無だ。筆者は1年以上続いたイラン人質事件の際、連日ホワイトハウスでのブリーフィングに臨んだが、つねに記者団と応対するのは大統領報道官と国家安全保障担当補佐官だった。カーター大統領自らが説明に立ったのは2回だけだった。

 危機の際に大統領は、できるだけ執務室にとどまり、各方面から上がってくる助言を下に局面打開に何が最善かについて熟考を重ねるのが普通だ。それだけ孤独な存在でもある。

 一方、危機に乗じて尋常ならざるTV露出がめだつトランプ大統領だが、それでも自らが期待するほどの支持率上昇につながらないのは、なぜなのか? 普通なら、こんな時こそ国民が最高指導者の下に結束し、支持率も過去の大統領同様、70~80%台に達しても不思議はないはずだが……。 

 もちろん、前述した各種世論調査の大統領支持率は当面の国民のムードを反映させたにすぎず、今後、情勢次第で上下変動は十分ありうる。ただそれにしても、トランプ氏の場合はこれまでのところ、危機に直面した過去の大統領のような二ケタ台の支持率上昇にただちにつながっていないことは事実だ。だが今のところ、その理由を十分説明した分析報道は、まだ米マスコミでは見られない。

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