Washington Files

2020年4月13日

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斎藤 彰 (さいとう・あきら)

ジャーナリスト、元読売新聞アメリカ総局長

1966年早稲田大学卒業。68年米カリフォルニア州立大学バークレー校大学院修士課程修了、70年読売新聞入社。ワシントン常駐特派員を2度務めた後、アメリカ総局長、東京本社取締役調査研究本部長などを歴任。近著に『中国VSアメリカ』『アメリカはカムバックする!』(いずれもウェッジ)がある。

出しゃばり過ぎに注意

 こうした中、共和党系有力紙ウォール・ストリート・ジャーナル紙は9日、「トランプの無駄なブリーフィングTrump’s Wasted Briefings」と題する異例の社説を掲載、十分な専門知識も準備もなしに自らが連日会見することを控えるべきだとして、以下のように論じた:

 「前大統領選でトランプに投票したという論説委員の一人が最近『コロナウイルス問題のホワイトハウス・ブリーフィングをTVで見るのをやめた』というメモ書きを寄こしてきた。理由を尋ねると『ウイルス撃退についての具体的中身でなく、大統領の口説ばかりだから』だというのだ。確かに過去3週間余りを振り返ると、定例ブリーフィングは彼のための見せ場と化した感があり、コロナ危機のために自分で(大統領選のための)遊説に出かけられなくなった穴埋め替わりに利用している」

 「最近も、大統領が『コロナウイルス脅威はインフルエンザ並み』と述べたことをめぐって記者団と延々とやりとりがあったが、今国民が大統領の口から聞きたがっていることは、そんな弁明ではなく、身近かにいる人たちの生命をいかに救い、失職者たちをどう救済するかといった具体策だ。彼は連日自分でブリーフィングをすることで、バイデン候補に勝利できると思い込んでいるが、それは間違いだ。11月大統領選挙の唯一課題、それはすなわち、大統領としてこの危機をいかにうまく収拾し、経済を再生できるかということにほかならない」

 「トランプ氏がもし、国民のためにもっと有益なブリーフィングにしたいと思うなら、時間は45分以下とすること、危機対策タスクフォース議長を務めるペンス副大統領がブリーフィングを先導すること。ペンス氏がそのつど重要テーマについて説明し、質問を受けること、そして大統領は週に1~2回程度登壇することだ。そうすれば、わが同僚も再びブリーフィング中継を見るようになるだろう」

 しかし、この痛烈な社説は大統領を激怒させることになった。大統領は同日ただちにツイッター投稿し、「ウォールストリート紙はブリーフィングがどれだけ高い評価を受けているかを忘れている。自分にとってはフェイクニュースを回避し、正しい見解を伝える唯一の手段だ。同紙はフェイクニュース!」と激しく反論した。

 一方で大統領は、9日午後の定例ブリーフィングでは初めて自らの“独演会”を冒頭の22分間だけにとどめ、残り時間はペンス氏のほか、毎回同席するアンソニー・ファウチ国立アレルギー・感染症研究所長に詳しい説明を任せた。最近側近たちの間からも、「長すぎる大統領のブリーフィングは支持率押し上げのためにならない」との冷めた見方も出始めていたという。大統領が最も信頼を寄せる唯一のTV局として知られる「Fox News」の著名政治解説者デービッド・ヒューム氏も「大統領の独演はできるだけ早く切り上げ、マイクを副大統領やベテラン専門家に渡すべきだ」と述べたばかりだった。

 さらに、ニューヨーク・タイムズ紙などの有力紙の間でも、大統領によるブリーフィングでは虚言、事実の曲解、前言撤回などが多すぎることを理由に、「ジャーナリストがいつまでも政治利用され続けていいのか」といった自省の声も上がり始めていた。

 コロナウイルス危機を逆手に取ったトランプ氏の政治ショーも「過ぎたるは及ばざるがごとし」の感を呈している。

  
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