2024年11月22日(金)

From NY

2020年5月9日

医療関係者には無料の配車も

 4月に一部を除く多くの市民が自宅勤務となってから、ニューヨークの地下鉄の乗車率は90%減になったという。主に利用しているのは、医療従事者などエッセンシャルワーカーと呼ばれる、社会に必要不可欠な職業の人たちだ。

 だが今回の午前1時から5時までのシャットダウンにより、1万1000人の医療従事者たちの通勤に支障が出ることになった。

 マンハッタン内で何軒かのホテルが医療従事者たち専用の宿泊施設になっているが、まだまだ長時間かけて通勤している人々も大勢いる。そのためMTAは地下鉄の運休時間中は、路線バスの台数を平常時よりも300台増やし、市内全体で1100本ほど臨時運行している。

 さらにバスの乗車時間が1時間20分以上、あるいは3度以上乗り換えないと通勤できない医療従事者にはMTAが毎晩片道分のタクシー、あるいはUberなど配車サービスを無料提供している。当初は一晩一人につき2回まで無料乗車提供の予定だったが、午前1時から5時の間に出勤、業務を終えて帰宅をする医療従事者はいないという理由で、片道分になったという。

地下鉄がホームレスたちの行き先に

 この運行休止の理由の一つには、がら空きとなった地下鉄の車両がホームレスたちに占領されるようになったということもある。

 市内のシェルターでも感染者が出ているため、ホームレスたちが街にあふれて、地下鉄の駅や車両で寝どまりをする姿が目立つようになった。

 そのため医療従事者たちは、体を縮こませながら、ホームレスと同じ車両の中で長時間の通勤をこなさなくてはならない。だが5月6日からは、シャットダウンの時間になるとMTA職員と警察官、シェルターの職員たちが協力し合って、地下鉄の中にいるホームレスの人たちをシェルターへと誘導している。中には感染の恐れから拒否する人もいるが、多くはシャワーもベッドも使えるシェルターへ快く移動するという。

紫外線ランプは有効な殺菌になるか

 「消毒液を注入し、強い紫外線を当てて新型コロナウイルスの患者を治療してはどうか」と発言して、世界中の失笑をかったのはトランプ大統領だったが、地下鉄内の消毒には紫外線ランプも使用されている。人体に直接照射すると有害だが、水や、医療研究所などで使用される器具の殺菌消毒には使われている紫外線ランプ。これが新型コロナにどのくらい有効であるかは、まだ試験的段階だという。強い効果が証明できれば、また新しい対処法も見えてくるかもしれない。

 5月7日のクオモ知事の発表によると、ニューヨーク州では24日間連続でCOVIT19の感染者の入院数が減り続けている。また死亡者数は、7日連続で300人を下回った。とはいえ州全体で毎日200人以上の人が亡くなっている。

 まだまだ先が見えない状態ながら、この地下鉄の徹底消毒が今後の感染拡大の歯止めの一つになってくれることを期待したい。

  
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