From NY

2020年5月9日

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田村明子 (たむら・あきこ)

ジャーナリスト

盛岡市生まれ。1977年米国に単身留学し、1980年から現在までニューヨーク在住。著書に『ニューヨーカーに学ぶ軽く見られない英語』(朝日新書)、『知的な英語、好かれる英語』(生活人新書)、『女を上げる英会話』(青春出版社)、『聞き上手の英会話』(KADOKAWA/中経出版)など。翻訳書も多数。フィギュアスケートライターとしても知られており、『挑戦者たち-男子フィギュアスケート平昌五輪を超えて』(新潮社)で2018年ミズノスポーツライター賞受賞。

 5月6日から、ニューヨーク市の地下鉄が午前1時から5時まで、全面的に運行休止することになった。1904年にオープンしてから、初めてのことだという。

 日本をはじめとする多くの国では、深夜から明け方にかけて地下鉄の運行が止まるのは、ごく当たり前のこと。「本日の運行は終了しました」というアナウンスは、毎日流れている。

 でもニューヨーク市では、過去115年間、(部分的に線路工事などで止まったことはあるにせよ)地下鉄は一度も休むことなく運行し続けてきた。

 ニューヨークの地下鉄といえば、70年代から80年代は落書きだらけで、治安が悪いと言われていた時代もあった。現在ではずっときれいで安全になったが、日本のように正確な時刻表が掲示されているわけでもなく、ひたすら来るまで待つ、というのが現実だった。それでも唯一誇れるのは、週7日間24時間運行していることだったのだ。

 だが新型コロナウイルスの感染防止対策の一つとして、クオモ州知事の指示により、これまで72時間に一度行われてきた車内、駅構内の徹底清掃、消毒を、24時間に一度にするために、MTA(メトロポリタン・トランジット・オーソリティ)史上初の、完全なる運行休止に踏み切ったのである。

深夜に全面運休となったニューヨークの地下鉄(筆者撮影)

多くの犠牲者を出したMTA

 「この過去に例のない思い切った打開策を実行するのは、市民たちと職員たちの健康を守るためです」。MTAチェアマンであるパトリック・フォイエは、運休が開始される前日の報道会見でそう語った。

 地下鉄のみならず、路線バス、ロングアイランド鉄道などを運営するMTAでは、すでに100人以上の職員が、新型コロナのために亡くなっている。

 乗客と近距離で接するチャンスがもっとも大きい路線バスの運転手たちの犠牲者が多く、現在バスでは乗客は後ろのドアのみを使用。メトロカードのスキャナーは運転手の横にあるため、乗車賃は徴収せずに事実上、運賃無料になっている。

 このようなことが可能なのも、MTAはニューヨーク州によって運営されている公共事業であるからだ。現在は本数をかなり減らしているとはいえ、全路線ともまだ基本的に運行している。

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