海野素央の Love Trumps Hate

2020年6月2日

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海野素央 (うんの・もとお)

明治大学教授 心理学博士

明治大学政治経済学部教授。心理学博士。アメリカン大学(ワシントンDC)異文化マネジメント客員研究員(08年~10年、12年~13年)。専門は異文化間コミュニケーション論、異文化マネジメント論。08年と12年米大統領選挙で研究の一環として日本人で初めてオバマ陣営にボランティアの草の根運動員として参加。激戦州南部バージニア州などで4200軒の戸別訪問を実施。10年、14年及び18年中間選挙において米下院外交委員会に所属するコノリー議員の選挙運動に加わる。16年米大統領選挙ではクリントン陣営に入る。中西部オハイオ州、ミシガン州並びに東部ペンシルべニア州など11州で3300軒の戸別訪問を行う。20年民主党大統領候補指名争いではバイデン・サンダース両陣営で戸別訪問を実施。南部サウスカロライナ州などで黒人の多い地域を回る。著書に「オバマ再選の内幕」(同友館)など多数。

人種差別的フレーズと「脅し」

 中西部ミネソタ州ミネアポリスで5月25日、白人警察官が武器を所有していないアフリカ系の容疑者の首を膝で押さえつけて、死亡させました。この白人警察官の人種差別的な行動に対して怒った抗議活動家が、ミネアポリス、ニューヨーク、オークランド及び首都ワシントンDCなどで抗議デモを行い、それが暴徒化しています。

 これに関して、トランプ大統領は自身のツイッターに「略奪が始まれば、発砲が始まる」とつぶやき、沈静化させるどころか、挑発的なメッセージを発信して扇動しました。ツイッター社はこの投稿内容を「暴力の賛美」とみなし、警告を発して、クリックしないと閲覧をできなくしました。

 トランプ氏が引用した「略奪が始まれば、発砲が始まる」というフレーズは、1967年12月に南部フロリダ州マイアミ市警のウォルター・ヘッドリー本部長が、同市のアフリカ系コミュニティーに向かって発した差別的発言です。しかも、「脅し」文句でもあります。

 米メディアによれば、ヘッドリー本部長はアフリカ系を警察官として採用しましたが、白人のみを「警察官(policeman)」とみなし、アフリカ系を「パトロールマン(patrolman)」と呼んでいました。ちなみに、現在は警察官は「police officer」ですので、パトロールマンはかなり差別的と言わざるを得ません。

 おそらくトランプ大統領は、ヘッドリー本部長のフレーズを意識して使ったのでしょう。

誰にアピールしたのか?

 トランプ大統領は5月30日、自身のツイッターに抗議活動家に対して、「ホワイトハウスの警備のフェンスを越えていたならば、見たことがないような獰猛な犬と不吉な武器のお出迎えを受けていただろう」と投稿し、「脅し」をかけました。「獰猛な犬」は公民権運動の暗い時代に、抗議デモを行うアフリカ系に使われた警察犬のイメージがあります。

 ということは、「略奪が始まれば、発砲が始まる」「獰猛な犬」は、トランプ大統領の支持基盤である白人至上主義者を喜ばせるメッセージと言えます。つまり選挙目的のメッセージだったのです。

 南部バージニア州シャーロッツビルで17年8月12日に起きた白人至上主義者と抗議活動家の衝突において、トランプ氏は前者を擁護する発言をしました。このときも、支持基盤の白人至上主義者を意識していました。

 前述した通り、トランプ大統領はツイッター社と激しく対立し、SNSの運営会社に規制をかけました。ただ、ツイッターは支持基盤に訴え、再選するために不可欠な武器であることは確かです。従って、トランプ氏がこの武器を放棄するとはとても想像できません。

  
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