「法と秩序」の大統領
トランプ大統領は自身を「法と秩序」の大統領と呼んでいます。2016年米大統領選挙において、ヒラリー・クリントン元国務長官が私用メールサーバーで公務を行った「メール問題」が発覚しました。すると、トランプ氏はクリントン氏と自分を対比させるために、「法と秩序」を持ち出して強調しました。クリントン氏は違法行為をしたと、選挙戦の最後まで激しく非難しました。
20年大統領選挙においてトランプ大統領には、自身を「法と秩序」を守る大統領、破壊行為を続ける極左グループ「アンティファ(anti-fascist):反独裁国家主義者」を「違法と無秩序」のテロ組織として描く意図があります。この対立構図を演出し、先鋭化して、支持基盤の警察官と共に「法と秩序」を守り抜くというメッセージを発信しています。
実際、トランプ陣営はウェブ上で支持者を対象に、
つまり、黒人男性「暴行死事件」よりも一部のデモ隊による「暴徒化」に米国民の目を向けさせる選挙戦略に出た訳です。ただ、この戦略は功を奏しているとは到底言えません。
「暴徒化」よりも「暴行死事件」
米NBCニュースとウォール・ストリート・ジャーナル紙による共同世論調査(20年5月29~6月2日実施)によれば、80%が「米国はコントロールされていない」と回答し、「米国はコントロールされている」の15%を65ポイントも上回りました。同調査ではトランプ大統領の支持率は45%ですので、トランプ支持者の30%が米国社会は制御が効かない状態に陥っているとみています。
さらに、白人警察官による「黒人男性暴行死事件」と「暴徒化した一部の抗議デモ」のどちらを懸念するのか、という質問に対して約6割が前者と回答しました。「暴徒化」と答えたのは約3割に止まっています。
人種別にみると、白人でさえ54%が「暴行死事件」を挙げており、「暴徒化」を24ポイントもリードしています。一方、黒人は「暴行死事件」が「暴徒化」を63ポイントも上回っています。
結局、トランプ大統領及びマクナニー報道官は、警察官を擁護し、米国民の目を「暴行死事件」から「暴徒化」に向けるための対抗策を打っているのですが、効果を上げていません。
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