TDKでは、昨年から中途採用などでのオンライン面接を実施していた。また社内でもオンラインを用いた会議システムの活用が進みつつあった。それらのノウハウを活かし、新型コロナの影響を受ける以前から、オンラインを用いた面接を予定していたという。「選考スケジュールの調整や、役員など面接官の調整に時間がかかる。何より学生に毎回来てもらうのも申し訳ない」(国内人財開発統括部の採用課長・佐藤有子氏)と、従来の採用の在り方を見直した。
今年からの新たな試みとして、長くて5分程度のPR動画の作成を学生に課した。一発勝負ではなく、学生は自分が納得がいくまで撮り直せる。面接官側も同様に、何度も見返して検討することができる。オンライン面接も同様だ。「仮に採用においてミスマッチが起きたとしても、記録があればどこでボタンを掛け違えたのか、振り返ることができるのもメリットだ」と人事部長の長谷部公一氏は語る。
Youtubeコメントに次々と学生からの質問
オンライン説明会も活況
三井物産では、社員の話を聞けるオンラインでの座談会において、在日本の社員のみならず、アジア圏を中心に駐在している社員も登場させた。商社社員としての働き方を学生に知ってもらうため、海外駐在員の生の声を届けることは効果的だ。
住友林業では、採用活動のオンライン化に伴い、職種別説明会における説明内容の見直しを行った。従来2時間程度あった内容を、15分程度に短縮。「仕事内容の理解、面白さを中心にエッセンスを凝縮した」(人事部チームマネージャー鎌田匡美氏)という。同時に、興味を持った学生を対象に、気軽に3分程度で視聴できる動画も作成した。
オンライン説明会のメリットの1つに、活発な意見交換がある。ビズリーチが5月に開催した、22年卒向けの就活キックオフイベントは、Youtubeで実施された。三井物産の企業セミナーでは、社員が5分程度企業説明をしたのち、すぐに質疑応答に。オンライン上で学生から次々に書き込まれる質問から、ビズリーチ担当者がピックアップして三井物産の社員に尋ねる。従来のように、周りの学生の顔を伺いながら挙手して社員に質問するのとは全く異なった形だ。
こうして説明会のオンライン化も進むと見込まれるが、採用コンサルタントの谷出正直氏は「オンライン説明会は多くの学生に見てもらえる反面、長時間の視聴は疲れる。短時間でいかに理解してもらうか、そのためにどの時期にどの内容を前面に伝えるか。などこれまでのコンテンツの見直しが必須だ。オンライン採用の拡がりは、企業にとって採用戦略の再考の機会となった」と指摘する。