定年バックパッカー海外放浪記

2020年6月21日

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高野凌 (たかの りょう)

定年バックパッカー

1953年、横浜生まれ。神奈川県出身。大学卒業後は商社、メーカー勤務を経て2013年定年退職。2014年春から海外放浪生活を始める。放浪歴は地中海、韓国、インドシナ半島、インドネシア、サンチアゴ巡礼など。サラリーマン時代は主として海外業務に従事。ニューヨーク、テヘラン、北京にて海外駐在を経験。身長170センチ、57キロ。獅子座。A型。現在2人のご子息は独立し、夫人との2人暮らし。孫1人。

(2019.7.23~9/2 42日間 総費用20万円〈航空券含む〉)

1泊720円の安宿に17連泊

ワルシャワ中心部。右の高層建築はスターリンが贈与した文化科学宮殿ビル

 8月15日 、グダンスクを朝方発車した超満員列車は昼過ぎにワルシャワ中央駅に到着。予約していた駅近のホステルは15階建て高層マンションの7階の一部を改装したものだった。大部屋の二段ベッドは17泊で470ズローチ、一泊約720円と物価の安いワルシャワでも破格。9月1日発の帰国フライトまで半月ほどワルシャワ見物する計画だった。

 8月15日午後、スーパーでビール、ワイン、食料品を仕入れて共同キッチンの冷蔵庫にビニール袋に名前とベッド番号を書いて保管。

 8月16日、朝食を作ろうと冷蔵庫から食料品を入れた袋を取り出したところ缶ビール1本、ハム200グラムが消えていた。夜中に誰かが盗んだのだ。過去5年間世界各国の安宿に泊まってきたが食料を盗まれたことは一度もなかった。こうした安宿はバックパッカーと呼ばれる若い旅行者が多いが、他人の物を盗むような種類の人間はいなかった。

 8月16日夕刻、近くのベッドで寝泊まりしているフィリピン人のフェルディナンド。彼の家系は福建華僑で一族は移住後にカトリックに改宗。フェルディナンドは漢字も少しは読めるようで、血統的には漢民族。

 彼は高校卒業後出稼ぎに出て以来、もう5年以上フィリピンには戻っていない。故郷には仕事もなく、親兄弟の多くは出稼ぎに出ており故郷に帰っても仕方ないという。一億人の人口の10%、即ち一千万人が常に海外で働いている出稼ぎ大国フィリピンの悲しい一面だ。

 フェルディナンドによるとEU加盟国で外国人労働者が一番簡単に労働許可証を得られるのがポーランド。彼も正規の労働許可証が下りるのを待っているが、ホステルの宿泊客の大半は労働許可証待ちか、就業先を探している外国人だという。

バングラデッシュから見たポーランド

 8月17日、隣のベッドのバングラデッシュの学生と挨拶。彼の兄はポーランドで3年間も出稼ぎしているという。バングラデッシュは伝統的にサウジなど中東産油国への出稼ぎ労働者が多いが、近年は隣国インドへの出稼ぎが激増。国境を越えて日帰りでインドへ出稼ぎに行くバングラ人だけでも50万人もいるという。

 彼はポーランドのポズナン大学で土木工事管理(Management of Civil Engineering)を学んでいる。ポーランドの大学は授業料が安く英語で授業するコースが多いので途上国の留学生が多いらしい。

 ポーランドで学位を取得すればEUのドイツ、オランダ、フランス、デンマークといった所得水準の高い国で専門家として就業することが可能になると目を輝かして語った。

 8月17日、受付嬢のマリアとおしゃべり。マリアはウクライナ国境近くの森林地帯の寒村の出身。ホステルの宿泊者で一番多いのはウクライナ人労働者で、次がロシア人という。世界中から外国人労働者が来ておりウクライナ、ロシア以外の当日の外国人労働者の宿泊客はバングラデッシュ3人、パキスタン2人、インド人2人、ダゲスタン1人、フィリピン1人、ネパール1人とのこと。

 ウクライナ、ロシア、ベラルーシなど東方諸国に対してポーランド政府が特別簡易手続きで労働許可する制度が背景にあるようだ。

 8月18日午後5時頃、食料買出しから戻るとホステル内部が騒然としていた。受付嬢のマリアに聞くと宿泊客が酔っ払って騒ぎをおこしたという。午後3時過ぎにチェックインした4人のウクライナ人の若者は一部屋を借りた。4人は直ぐに部屋でウオッカを飲んで騒ぎ始めた。4時頃マリア嬢が注意すると部屋に引きずり込まれ乱暴されそうになった。

 辛くも逃れたマリアはオーナーに電話。オーナーは即座に警察を呼ぶように指示して、オーナー自身もホステルに駆け付けた。筆者自身が見聞したところ、パトカーが到着して警察官が四人の身元確認を始めたが、1人が意識を失って倒れてしまい残った3人はオロオロするばかり。
3人はパトカーで連行、意識不明の1人は救急車で搬送という顛末。

 ホステルのオーナーは50歳前後であろうか、几帳面な性格のようだ。自ら酔っ払いが暴れていた4人部屋の掃除をしていた。オーナーは数年前にホステルを開業したが、最近次第に客層が悪くなってきたと嘆く。日本のオジサンが「先日冷蔵庫に入れておいた缶ビールとハムが盗難に遭った」とクレームしたら、オーナー氏は逆切れ。

 「ロシアやウクライナの連中は何でも持って行っちまう。キッチンの皿、コップ、スプーンは何度補充しても足りないし、砂糖や食用油は丸ごと消えちまう」

 「マットレスやカーテンを取り替えてリノベーションしたけど、悪い客ばかり増えちまう」と怒りは収まらない。

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