2024年12月22日(日)

古希バックパッカー海外放浪記

2020年6月14日

(2019.7.23~9/2 42日間 総費用20円〈航空券含む〉)

中世からの海港都市グダンスク

バルト海のグダンスク近郊の海水浴場

 バルト海に面するグダンスクは歴史的にはダンツィヒと呼ばれていたドイツ騎士団により築かれた海港都市だ。現在も運河沿いに中世の美しい街並みが残る。ポーランド民主化運動の拠点となった自由労組“連帯”本部があったグダンスク造船所でも知られている。

 グダンスクには一週間逗留。後半の3泊はグダンスク中央駅の対面のホステルに投宿。

 8月13日。スーパーで食材とワインを仕入れて、3階のキッチン付きラウンジに入ったら先客がいた。きれいに日焼けしたストレートロングヘア―のアジア系スレンダー美女。エキゾチックな外見から英語で挨拶したら、驚いたことに日本人でチカと名乗った。

 一緒に料理して、5時過ぎからラウンジでビールを飲みながらチカとディナー開始。ラウンジの大きな窓からグダンスクの中世の面影が残る街並みが眺望できる。

 チカは20代後半に見えたが30代半ばでバツイチとのこと。離婚して半年前に日本から西回りで世界一周旅行に出立したというが、旅の話はほとんどしない。絶景スポットやグルメといったフツウの旅人の話題には一切興味がない様子。

 ホステルのラウンジには他に誰もおらず二人だけ。ディナーが終わると白ワインを飲みながらまったり。

 10時頃になると酒の肴が欲しくなったのでモッツアレラチーズと生ハムを冷蔵庫から出してポテチと一緒に皿に載せたらチカはオジサンの技に感心。

 平凡な年金生活者にとりノースリーブの薄着姿の謎の美女と真夏の夜に差し向かいでワインを飲むというシチュエーションはそうそう起こりえることではない。

 11時頃、白ワインを飲み終えたがチカは席を立とうとしないので、部屋から買い置きの赤ワインを持参。「明日は隣のバスターミナルから朝6時のバスでドイツに移動するだけなの。バスで寝るから今夜はどんなに遅くなってもいいの」とチカはオジサンを誘うかのように赤ワインのグラスを傾けた。

 12時を過ぎたが、なにかきっかけがないと席を立てないような空気だ。クールビューティーを前に静謐で非現実的な時間が流れていった。

 午前3時過ぎにスタッフがラウンジの天窓の施錠確認に来たのを汐にやっとそれぞれのベッドに戻った。彼女がなぜ酔っ払いのオジサンに延々8時間も付き合ってくれたのか今も謎である。

勝ち組の韓国人シニア登場

ヴィスラ川南岸から眺望するワルシャワ中心部

 ポーランドの首都ワルシャワは古都と近代都市の二つの顔を持つ魅力的な街である。事情があり17泊することになった。

 8月27日。韓国の朴氏70歳がホステルの隣のベッドにチェックイン。朴氏は近くのホテルの個室を予約していた。ところが手違いで満室のため2日間だけ安ホステルに投宿することになったという。朴氏は3カ月の予定で欧州周遊中だった。

 現役時代は韓国の大手建設会社の土木技師(civil engineer)。身長180センチのスポーツマンタイプ。銀髪豊かで知的風貌と相俟って中々の偉丈夫である。海外プロジェクト経験もあり英語も流暢だ。

 概して海外一人旅している韓国人シニアには良識人が多い。ベトナムの屋台で一緒になった元会計監査法人役員で引退後は大学で非常勤講師をしていた公認会計士。インドのホステルで遭遇した元高校教員。そして休暇を利用してサンチアゴ巡礼旅をしていた韓国法務省の高官などなど。

 朴氏は退職後も暇潰しにフリーで施工監査を引受けている。年金も受給しているが、趣味や飲み会などで贅沢をしたいので月に一週間くらいの仕事は気分転換とお小遣い稼ぎの一石二鳥のようだ。

 ソウル市内の有名高級住宅街地のカンナム(江南)のマンション住まいだ。

韓国でも深刻な“引きこもり”問題

 年金生活について語っているうちに朴氏は意外なことを語りだした。朴氏の子供二人はいつまでも独立しないでマンションの子供部屋に引きこもっているのが悩みだと打ち明けた。

 長男は有名大学を卒業して大手財閥企業に就職したエリートで自慢の息子だった。しかし韓国社会特有の猛烈な出世競争で脱落して10年前に会社を辞めてしまった。

 うつ病が原因で体調がおかしくなったようだ。それからマンションの自室に引き籠り、42歳の現在も自室で電子ゲームをするだけの毎日だと朴氏は嘆いた。

 夕食だけは奥さんが温かい食事を部屋に差し入れている。生活は昼夜が逆転して夜中に外出してコンビニで飲み物や食べ物を買っているらしい。

 他方、長女は音大でパイプオルガンを専攻したが、卒業後は一切定職に就いていない。年に数回教会で演奏のアルバイトをするだけで、彼氏もおらず実家で居候を続けている。韓国ではアラフォー女子はまともな結婚は望めないと朴氏は娘の将来を悲観した。


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