2024年12月8日(日)

古希バックパッカー海外放浪記

2020年6月21日

インド人起業家

ワルシャワの軍事博物館のソ連の戦車。ソ連軍は冷戦時代には西側への 牽制だけでなくポーランド国内の反体制派弾圧を担っていた

 8月19日、同室の中年インド男性はインドのハイデラバードで人材派遣会社を共同経営している。現在ポーランドの当局に3年間の期間居住ビザ(Temporary Residential Visa)を申請中。ワルシャワ繁華街のインド料理屋で夕方から皿洗いをして滞在資金に充てている。

 ポーランドで就労を希望するインド人のために近い将来ワルシャワに人材派遣会社を設立する計画だ。ポーランドはEUで最も外国人労働者に門戸を開いているので彼はビジネスプランに自信を持っていた。

 8月25日、毎日ラウンジで一心不乱に勉強している女子がいた。彼女はウクライナの医大を卒業した歯科医だった。ポーランドの歯科医資格を取るために歯科とポーランド語会話の二つの試験をパスするべく猛勉強中。仲間の女子歯科医三人と一緒に受験するとのこと。

 合格したらポーランドで1年間無給インターンとして勤務してから晴れて歯科医免許を取得できる長い道のりである。ポーランドで歯科医として実績を積めばドイツなど他の国での勤務も可能になる。彼女の最終目標はドイツだった。

 グダンスクの薬学部の女学生から聞いた話を思い出した。彼女のボーイフレンドは医学部で学ぶレバノン人留学生。ポーランドの医学部は学費が安く英語授業のコースがあり途上国の学生に人気らしい。

 レバノン人の彼氏は卒業後ポーランドで病院勤務をしながらドイツの医師語学検定を受験する計画だった。患者と意思疎通できるレベルのドイツ語なので難易度は比較的低いらしい。二人の将来の夢はドイツでの就業だった。

 8月29日夕刻、ラウンジでビールを飲んでいたら、長逗留しているパキスタン人が酔っ払って「お前は気に食わない野郎だ。俺のビジネスの邪魔をしやがって」と因縁をつけてきた。ヤバイ雰囲気なので早々にラウンジを引き上げた。

 このパキスタン人は金に困っているらしく、誰かしら捕まえては小遣い稼ぎをしようと狙っていた。数日前にスウェーデン人に「可愛い子(bambina)がいるから紹介するよ。50ドルでOKだ」と誘っていた。

 翌日夕刻、くだんのパキスタン人が泥酔して部屋に乱入して来た。オジサンに罵詈雑言を浴びせてから壁を拳で叩き始めた。幸いに巨漢のスウェーデン人が上段のベッドから降りてきてパキスタン人を牽制してくれた。

 興奮が収まらずエスカレートしたパキスタン人はベッドの鉄の支柱を拳で殴って脅してきた。仕方ないので「私は貴方に対して何か失礼なことをしたのであるなら謝る。大変申し訳ない」と丁寧に頭を下げた。

 それからスウェーデン人に促されて部屋を出て行った。翌日よくよく考えてみたら思い当たるふしがあった。1週間くらい前に田舎から出て来た純朴そうなポーランド青年にパキスタン人が繁華街で通行人に配っているレストランの割引券を300円くらいで売りつけようとしていたのだ。

 青年がオジサンに意見を求めてきたので「やめておけ」とアドバイスしたのを逆恨みしていたのだ。

  
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